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【特集】わが省庁の重点施策2023

環境省

【令和5年度予算 6600億円】

はじめに
 わが国が直面する数々の社会課題に対し、炭素中立(カーボンニュートラル)・循環経済(サーキュラーエコノミー)・自然再興(ネイチャーポジティブ)の同時達成に向け、地域循環共生圏の構築等により統合的に取り組みを推進することを通じて、持続可能な新たな成長を実現し、将来にわたる質の高い生活の確保を目指す。

環境外交
 本年4月のG7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合では、議長国として、世界全体でのカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブのさらなる進展に向け、国際的議論をリードする。また、プラスチック汚染対策についても、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の提唱国として、条約交渉を主導する。

 「アジア・ゼロエミッション共同体構想」の実現等に向けては、二国間クレジット制度(JCM)のさらなる推進、パリ協定6条実施パートナーシップ等を通じた国際的な「質の高い炭素市場」の形成、都市間連携による世界の都市の脱炭素化・強靱化、「ロス&ダメージ支援パッケージ」の実施などを推進する。

炭素中⽴
 気候変動の影響による熱中症死亡者数は近年、年間1000人を超える年が頻発するなど、自然災害を上回る状況であり、熱中症対策のさらなる推進のため、熱中症特別警戒情報の創設などを含む気候変動適応法の改正案を本国会に提出した。

 わが国が実現を目指す2050年カーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス46%削減、さらに50%の高みに向けては、地球温暖化対策計画に基づき取り組みを進めるとともに、政府全体の施策の進捗管理を行う。本年2月に「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定されたことも受け、「成長志向型カーボンプライシング構想」の実施、地域脱炭素移行の加速化、商用車の電動化、住宅の断熱改修をはじめとして、GXの実現に全力で取り組む。

 需要側からのGXの推進が重要となることから、地域・くらしの脱炭素化を実現するべく、地域共生・裨益型の再エネの最大限導入と、再エネと併せた蓄エネ・省エネを推進する。具体的には、脱炭素先行地域や、脱炭素の基盤となる重点対策の全国実施を通じて地域課題の解決に貢献する。さらに、株式会社脱炭素化支援機構による資金供給、社会インフラや中小企業をはじめとするサプライチェーン分野の投資・脱炭素経営促進、地域金融機関とも連携した環境金融等を推進する。また、くらしの観点では、住宅・建築物のZEH化・ZEB化や省CO2改修などの既存最先端の脱炭素製品・サービスの社会実装を促進する。これらの取り組みを、「新しい豊かな暮らし」を提案する国民運動で後押しながら、産業・社会の構造転換や面的な需要創出を進める。

循環経済
 GX基本方針や循環経済工程表に基づき、製造業など動脈産業と廃棄物処理業など静脈産業が連携した動静脈一体の資源循環を実現していく。国外を含めたライフサイクル全体の徹底的な資源循環により、脱炭素、生物多様性の保全、わが国の経済安全保障の強化にも貢献する。具体的には、プラスチック等のリサイクル体制の整備、バイオマスプラスチックや持続可能な航空燃料(SAF)の製造実証、太陽光パネルのリサイクルや国内外の金属資源のリサイクル等を推進する。加えて、食品ロスの削減やサステナブルファッション推進などにも取り組む。

 また、災害廃棄物の円滑・迅速な処理と、大規模災害に備えた万全な災害廃棄物処理体制の構築に取り組む。同時に、一般廃棄物処理施設の更新需要への適切な対応、浄化槽整備の推進等を進める。さらに、海洋プラスチックごみに関しても、陸域からの流出防止と海岸に漂着したごみ処理の両輪によって、着実に対策を進める。

自然再興
 2030年までに陸と海の30%以上の保全を目指す「30by30目標」の達成に向け、国立・国定公園の新規指定等により保護地域を拡充するとともに、民間の取り組み等によって生物多様性が保全されている里地里山や企業緑地等の区域について、「自然共生サイト」として今年中に100カ所以上の新規認定を目指す。加えて、昨年改正した外来生物法に基づくヒアリ等の外来種対策や、鳥獣保護管理を着実に実施して生態系や農林水産業等への影響を抑えつつ、希少種保全に取り組む。

 また、企業経営においても、豊かな生物多様性は必要不可欠な経営資源でもあるとの認識の下、経営の尺度としての自然資本の考え方の導入を促すため「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」の策定に向けた検討を進める。さらに、国立公園満喫プロジェクトにおいて、新たに民間提案を踏まえて利用拠点の面的魅力向上に取り組み、インバウンド拡大や地域活性化に繋げ、保護と利用の好循環を実現する。

人の命と環境を守る基盤的取り組み
 水俣病をはじめとする公害健康被害対策と石綿健康被害者の救済、子どもの健康と環境に関するいわゆるエコチル調査に、引き続き真摯に取り組む。また、有機フッ素化合物対策や動物愛護管理等を推進するほか、良好な環境の創出に向けて取り組む。

東日本大震災からの復興・再生と未来志向の取り組み
 帰還困難区域のうち特定復興再生拠点区域内においては、今年春頃に避難指示解除を予定している町村において除染や家屋等の解体を着実に実施する。また、拠点区域外においては、帰還意向のある住民の方々の帰還に向けて、関係省庁と連携して取り組む。

 福島県内除去土壌等の県外最終処分に向けては、「『福島、その先の環境へ。』対話フォーラム」の開催等を通じ、まずは全国の皆さんにこの課題を知っていただく取り組みを着実に推進する。

 また、本年に開始が見込まれるALPS処理水の海洋放出に対応した海域環境モニタリングや、放射線の健康影響に関する住民の不安解消、風評払拭に取り組む。さらに、福島の産業・まち・暮らしの創生に向けた「福島再生・未来志向プロジェクト」により、脱炭素を基軸とした事業創出等を推進する。

防衛省

【令和5年度予算 6兆8219億円】

 令和5年度防衛関係費の一般会計歳出予算額はSACO関係経費の115億円、米軍再編関係経費のうち地元負担軽減分の2103億円およびデジタル庁に係る経費339億円を加えて、6兆8219億円となり、前年度の当初予算額に比べ、1兆4214億円の増となっている。

 国際社会は今、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面している。令和4年12月、わが国が直面する現実に向き合い、将来にわたりわが国を力強く守り抜くため、新しい「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」および「防衛力整備計画」を閣議決定した。防衛力整備計画では「2023年度から2027年度までの5年間における本計画の実施に必要な防衛力整備の水準に係る金額は、43兆円程度とする」とされており、これに基づき、令和5年度予算は、今後5年以内に緊急的に防衛力を抜本的強化するために必要な取り組みを積み上げ、防衛力抜本的強化「元年」予算として、新たな防衛力整備計画の初年度にふさわしい内容および予算規模を確保している。

 具体的には、将来の防衛力の中核となる分野について、「スタンド・オフ防衛能力」、「無人アセット防衛能力」などについて大幅に予算を増やすとともに、「統合防空ミサイル防衛能力」、宇宙・サイバーを含む「領域横断作戦能力」、「指揮統制・情報関連機能」、「機動展開能力・国民保護」、「持続性・強靱性」、「防衛生産・技術基盤」などについて必要な経費を確保している。

 中でも、現有装備品の最大限の活用のため、可動数向上や弾薬確保、主要な防衛施設の強靱化への投資を加速するとともに、隊員の生活・勤務環境の改善もこれまで以上に推進すべく、所要額を確保したものとなっている。

 以下、防衛省における重点施策について紹介する。

1 わが国の防衛力の抜本的な強化
 隊員の安全を可能な限り確保する観点から、相手の脅威圏外からできる限り遠方において阻止する能力を高め、抑止力を強化するため、スタンド・オフ防衛能力を強化する。また、多様化・複雑化する経空脅威に適切に対処するため、統合防空ミサイル防衛能力を強化する。

 万が一、抑止が破れ、わが国への侵攻が生起した場合には、スタンド・オフ防衛能力と統合防空ミサイル防衛能力に加え、有人アセット、さらに無人アセットを駆使するとともに、水中・海上・空中といった領域を横断して優越を獲得し、非対称的な優勢を確保する。このため、無人アセット防衛能力、領域横断作戦能力および指揮統制・情報関連機能を強化する。

 さらに、迅速かつ粘り強く活動し続けて、相手方に侵攻意図を断念させる必要がある。このため、機動展開能力・国民保護や、弾薬・燃料の確保、可動数の向上、施設の強靱化などの持続性・強靱性を強化する。

2 同盟国・同志国等との協力・連携
 わが国の安全保障を確保する観点から、米国との同盟関係はその基軸であるとともに、1カ国でも多くの国々との連携強化が極めて重要である。このため、日米同盟による共同抑止・対処を強化するとともに、自由で開かれたインド太平洋というビジョンを踏まえつつ、同志国等との連携を推進していく。

3  いわばわが国の防衛力そのものとしての防衛生産・技術基盤
 力強く持続可能な防衛産業を構築するため、予算関連法案として「防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案」を提出するほか、新たな利益率の算定方式の導入など、防衛産業を取り巻くさまざまなリスクへの対処や防衛産業の販路の拡大等に向けた抜本的な強化策を推進する。また、将来の戦い方に直結し得る分野に集中的に投資するとともに、他国に先駆け先進的な能力を実現するため、民生先端技術を幅広く取り込むことなどにより、早期の技術獲得・装備化を実現する。

4  防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するための基盤の強化
 自衛隊員について、事務官・技官なども含め、必要な人員を確保し、宿舎の建て替えを含め、全ての隊員が遺憾なく能力を発揮できる環境を整備する。また、衛生機能について、有事において隊員の生命・身体を救う組織へと変革する。

5  最適化への取り組み
 防衛力整備計画においては、防衛力整備の一層の効率化・合理化の徹底等の取り組みを通じて実質的な財源確保を図ることとしており、令和5年度予算編成においては、重要度の低下した装備品の運用停止や、長期契約の活用、原価の精査等による調達の最適化などを図ることにより、約2572億円の効率化・合理化を実現している。