2024/08/01
内閣府/復興庁/警察庁/総務省/法務省/外務省/財務省/文部科学省/厚生労働省/農林水産省/経済産業省/国土交通省/環境省/防衛省
(各省庁予算は、3月23日の段階で案の内容も提示しています)
長期化するコロナ禍により依然として制約を受けつつ、徐々に発生以前の社会へ回帰し始めた2022 年、そこへ政情不安等に伴う燃料高、材料高が追い打ちをかけた。一方、政府はさらに安全保障、異次元の少子化対策等の重要課題に取り組む決意を表明している。ほどなくコロナも5類へ移行するなど、さまざまな不安と期待がない交ぜになる2023年春、各省庁予算はどのような内容が列挙されているのか。恒例の、わが省庁の重点施策をお届けする。
【令和5年度予算 5752億円】
【はじめに】
内閣府は、内閣総理大臣、内閣官房長官および特命担当大臣等の下、経済財政政策、科学技術・イノベーション政策、デジタル田園都市国家構想の実現といった国家運営の基本に関わる重要課題とともに、沖縄経済やアイヌ文化の振興、男女共同参画社会の実現など国民の暮らしと社会に関わる重要課題、経済安全保障や防災対策など国民の安全・安心の確保に関わる重要課題に関して各省より一段高い立場から企画立案および総合調整を行うなど、内閣総理大臣によるリーダーシップの発揮を直接支え、政策決定を支援する役割を担っている。
【1.経済財政政策の推進】 32億8200万円
経済再生を実現するため、骨太方針2022や予算編成の基本方針などで示された経済財政政策に関する重要課題への対応、経済・社会活動等に関する研究等の実施に取り組む。
また、休眠預金等の活用・NPO活動の推進、PPP/PFIの推進、成果連動型民間委託契約方式(PFS)の普及促進、公益法人制度の利便性の向上に取り組む。
【2.科学技術・イノベーション政策等の推進】586億6800万円
第6期「科学技術・イノベーション基本計画」および「統合イノベーション戦略2022」等に基づき、新しい資本主義の実現と持続的な経済成長に向け、総合科学技術・イノベーション会議の下で知や先端技術の創造とイノベーション・エコシステムの形成を一体的に推進し、科学技術立国の再興を図る。
また、原子力政策については、安全確保、国民理解、平和利用等に向けた取り組みを着実に実施する。
【3.知的財産戦略や宇宙戦略の推進等】204億4100万円
知的財産の創造、保護および活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進することを目的として設置されている知的財産戦略本部等の運営やクールジャパン戦略を推進する。
また、宇宙開発利用の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な政策に関する企画および立案並びに総合調整、宇宙開発利用の推進、公共の用又は公用に供される人工衛星等の整備および管理を行うとともに、健康・医療戦略を推進する。
【4.デジタルの力を活用した地方創生の推進】 1062億4100万円
各地域で行われてきた社会課題解決・魅力向上の取り組みをデジタルの力を活用して加速化・深化し、デジタル田園都市国家構想を実現するとともに、地方の創意工夫を生かした自主的な取り組みを政府一体となって支援する。
また、地方分権改革推進本部、地方分権改革有識者会議により、地方分権改革を着実かつ強力に進めるとともに、規制改革推進会議において、経済社会の構造改革を進める上で必要な規制の在り方の改革等を引き続き継続する。
【5.沖縄経済の振興】2679億500万円(自動車安全特別会計空港整備勘定(国土交通省所管)計上分を含む。)
沖縄は、成長著しいアジアの玄関口としての地理的特性や全国一高い出生率など、大きな優位性と潜在力を有する。これらを生かして、「強い沖縄経済」を実現し、日本経済成長の牽引役となるよう、国家戦略として沖縄振興策を総合的・積極的に推進する。
【6.アイヌ文化の振興】20億300万円
アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律に基づき、アイヌ政策を総合的かつ効果的に推進する。
【7.女性や障害者など全ての人が参加し能力を発揮できる社会の実現】30億7400万円
新型コロナウイルス感染症の影響が長引く中、「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022」や骨太方針2022に基づき、あらゆる分野における女性の参画拡大に向けた取り組みを進めるとともに、女性に対するあらゆる暴力の根絶に向けた取り組みを推進する。
また、国民一人一人が豊かな人間性を育み生きる力を身に付けていくとともに、年齢や障害の有無等にかかわりなく安全に安心して暮らせる「共生社会」を実現するために、高齢社会対策、障害者施策等、社会や国民生活に関わるさまざまな取り組みを推進する。
【8.経済安全保障等の強化】614億2700万円
経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(経済安全保障推進法)および経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する基本的な方針に基づき、①特定重要物資の安定的な供給の確保に関する制度、②基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する制度、③先端的な重要技術の開発支援に関する制度および④特許出願の非公開に関する制度、並びに安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進する。
また、総合海洋政策の推進、重要施設周辺および国境離島等における土地等の利用状況の調査および利用の規制等に関する法律の着実な執行、拉致被害者等への支援、国際平和協力業務等の実施、北方領土問題に係る国民世論の啓発等、遺棄化学兵器の発掘・回収および廃棄に取り組む。
【9.国民の安全な生活基盤の整備】171億7600万円 (※うちエネルギー対策特別会計 105億円)
地震・津波対策や火山防災対策の推進、大規模水害からの避難対策の推進、被災者支援を含む災害復旧・復興施策の推進など防災対策の充実を図る。
また、地域の原子力防災対策の充実・強化支援を推進するとともに、交通事故のない社会を目指して、交通安全対策を強化する。
【10.国民生活を支えるための行政基盤の整備】 181億3000万円
新たな国立公文書館建設に向けた取り組み、公文書管理制度の推進、栄典事務の適切な執行、政府広報・国際広報の積極的かつ効果的な展開に取り組む。
【令和5年度予算 5523億円】
【はじめに】
東日本大震災の発災から12年が経過した。この未曾有の大震災からの復興は、内閣の最重要課題の一つである。復興庁は、「現場主義」を徹底し、被災者に寄り添いながら、被災地の一日も早い復興に向けて、関係機関と連携して、復興行政に取り組んでいる。
【復興の現状】
この12年間、被災地の方々の御努力や関係者の御尽力により、復興は着実に進んでいる一方で、地域によってその状況はさまざまであり、いまだ避難生活を余儀なくされている方をはじめ、さまざまな困難に直面している方々も数多い。
地震・津波被災地域における住まいの再建やインフラ整備などが概ね完了する中で、心のケア等の残された課題について、被災者に寄り添いながら、きめ細かく対応していく。また、福島における原子力災害被災地域では、本格的な復興・再生に向けて、今後も中長期的に対応していく必要がある。
こうした状況を踏まえ、次の取り組みを着実に進める。
【被災地共通の課題】
被災地に共通の残された課題として、まずは被災者支援について、見守りや相談支援、心身のケア、生きがいづくり、コミュニティ形成など、生活再建のステージに応じた切れ目のない支援を行う。
また、防災集団移転促進事業の移転元地等の活用について、地域の個別の課題にきめ細かく対応し、被災自治体の取り組みを引き続き後押しする。
さらに、産業・生業の再生に向けて、企業立地や商業施設の整備等に引き続き取り組み、特に、被災地における中核産業である水産加工業については、販路の回復・開拓等の取り組みを引き続き支援する。
【福島の復興・再生】
福島の原子力災害からの復興・再生に向けては、まず、避難指示が解除された地域において、医療・介護、買い物、教育等の生活環境整備を進めるとともに、事業再開の支援、営農再開の加速化、森林・林業の再生、漁業の本格的な操業再開等、産業・生業の再生、雇用の確保を図る。また、新たな活力を呼び込めるよう、地方公共団体の自主性に基づく事業への支援や移住・起業する方に対する個人支援等、新たな住民の移住・定住の促進にも取り組む。
帰還困難区域については、「たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興・再生に責任を持って取り組む」との決意の下、特定復興再生拠点区域に関しては、昨年8月までに大熊町、双葉町、葛尾村について避難指示が解除されたところであり、復興が円滑に進むよう、取り組みを進める。富岡町、浪江町、飯舘村についても、本年春頃(注)の避難指示解除に向けて、除染やインフラ整備等を着実に進める。
また、拠点区域外への帰還・居住についても、2020年代をかけて、帰還意向のある住民が帰還できるよう、避難指示解除の取り組みを進めていくという基本的方針を実現すべく、福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案を今国会に提出している。次に、浜通り地域等において、新たな産業基盤の構築を目指す「福島イノベーション・コースト構想」について、引き続き地域における開発実証の支援、地元企業との連携促進や起業・創業を目指す方への支援等を推進する。
この構想をさらに発展させ、福島をはじめ東北の復興を実現するための夢や希望となるとともに、わが国の科学技術力・産業競争力の強化をけん引する「福島国際研究教育機構(F - REI(エフレイ))」を本年4月1日に設立した。F - REIが世界に冠たる「創造的復興の中核拠点」として、研究開発や産業化、人材育成の取り組みを加速させることができるよう、関係省庁と連携しながら、政府一丸となって支えていく。
今もなお続く風評の払拭のためには、科学的根拠に基づいた安全性等の正しい情報の発信が不可欠である。このため、インターネット、ラジオ等、多くの媒体を活用して効果的に国内外へ情報発信を行うなど、政府一体となって取り組みの充実を図る。被災地産品の販路拡大、輸入規制の撤廃に向けた諸外国・地域への働き掛け等についても、積極的に行う。
ALPS処理水の処分については、「基本方針」および本年1月に改定された「行動計画」や、復興庁が取りまとめた「情報発信等施策パッケージ」に基づき、政府一丸となって、決して風評影響を生じさせないという強い決意の下、科学的根拠に基づいた情報発信等の風評対策にしっかりと取り組む。引き続き、福島の復興・再生に向けて、国が前面に立って取り組んでいく。
【教訓の継承】
東日本大震災の記憶と教訓を後世に継承することが重要である。そのため、これまでの復興施策を振り返り、政府の制度や組織の変遷等を取りまとめる。また、これまでに蓄積された効果的な復興の手法・取り組みや民間のノウハウなど、復興に係る知見を関係機関と共有し、各地の伝承施設等との連携を通じて普及展開することで、将来の大規模災害の復興に生かすとともに、被災地内外の防災力向上に努める。
【むすびに】
震災から12年となる本年において、復興の司令塔として、現場主義を徹底し、被災者に寄り添いながら、引き続き、「福島の復興なくして東北の復興なし。東北の復興なくして日本の再生なし。」との強い決意の下、新型コロナウイルス感染症の影響にも留意しつつ、一日も早い東日本大震災からの復興に全力で取り組んでいく。
(注)三町村の特定復興再生拠点区域のうち、浪江町については本年3月31日付の避難指示解除が、富岡町については本年4月1日付の避難指示解除が、本年3月22日の原子力災害対策本部で決定された。
【令和5年度予算 2901億6900万円】
1.国と地方の警察機構と警察予算の構造
わが国の警察組織は、国の警察機関と都道府県の警察機関に大別される。国の警察機関としては、内閣総理大臣の所轄の下に国家公安委員会が置かれており、その管理の下に置かれる警察庁がある。都道府県の警察機関としては、都道府県知事の所轄の下に都道府県公安委員会が置かれ、その管理の下に置かれる都道府県警察がある。
また、警察予算は、国の警察庁予算と都道府県の都道府県警察予算から成り立っている。警察庁予算は、警察庁本庁および管区警察局等の国の警察機関に要する経費に加え、都道府県警察に要する経費の一部についても措置しており、具体的には、警察事務として国家的性格を有するものや警察事務の特質による国家的要請に応じさせるためのものに係る経費について国庫支弁しているほか、都道府県の支弁に係る経費の一部について補助している。
2.重点施策について
令和5年度警察庁予算額は、一般会計で2901億6900万円、令和4年度予算額に比して、28億3700万円(1%)の増となっている。このうち、交付税および譲与税配付金特別会計への繰入額として515億5700万円を計上している。
この予算における重点項目の大きな柱は以下に示す7点であり、それぞれ具体的な内容は記述の通りである。
第1「テロ対策と大規模災害等の緊急事態への対処」
わが国に対する国際テロの脅威の継続、令和5年のG7広島サミット、令和7年の大阪・関西万博の開催を踏まえ、引き続き、情報収集・分析、水際対策、警戒警備等のテロ対策を強化するほか、安倍元総理銃撃事件を踏まえて警護警備を強化していく必要がある。
また、頻発する豪雨災害、発生が懸念される首都直下地震、南海トラフ地震、火山噴火等のほか、国境離島における警備事象等の緊急事態に係る対処能力の強化を図る。
第2「サイバー空間の脅威への対処」
サイバー犯罪の検挙件数が過去最多を記録し、またわが国の政府機関、民間事業者等を狙ったサイバー攻撃が発生するなど、サイバー空間の脅威は極めて深刻な情勢にある。国境を越えて実行されるサイバー犯罪・サイバー攻撃や、不正プログラムを用いた攻撃手法などの新たな脅威に先制的かつ能動的に対処するため、サイバー警察局およびサイバー特別捜査隊の充実強化をはじめとする警察の人的・物的基盤の強化を図るなど、警察組織の総合力を発揮した効果的な対策を推進する。
第3「安全かつ快適な交通の確保」
近年、交通事故については、発生件数、負傷者数、いずれも減少傾向にあるものの、他の年齢層に比べて致死率が高い高齢者の人口が増加していることなどを背景として、交通事故死者に占める高齢者の比率が高水準となっているほか、次世代を担う子どもの掛け替えのない命が犠牲となる痛ましい事故が後を絶たず、交通事故情勢は依然として厳しい状況にある。
また、交通渋滞が国民に多大な経済損失を与えるとともに、交通公害や地球温暖化の主な要因の一つとなっている。
このため、交通の安全を確保するための諸施策を推進するほか、快適な交通を確保するために円滑な交通環境の整備等の対策を推進する。
第4「客観証拠重視の捜査のための基盤整備」
犯罪の悪質化・巧妙化、裁判員裁判制度の導入等により犯罪の立証における客観証拠の重要性が高まる中、DNA型鑑定をはじめとする警察における科学捜査力の強化を図る。
また、警察における適正な死体取扱業務を推進する。
第5「組織犯罪対策の推進」
近年、暴力団・準暴力団の資金獲得活動が多様化しているほか、覚醒剤や大麻の流通、銃器隠匿方法の巧妙化、犯罪のグローバル化や犯罪インフラの利用が進んでいる。こうした厳しい組織犯罪情勢を踏まえ、暴力団をはじめとする犯罪組織の弱体化・壊滅に向けた対策を推進する。
第6「生活の安全を脅かす犯罪対策の推進」
刑法犯認知件数は減少しているものの、ストーカー・DV、児童虐待や特殊詐欺をはじめとした女性、子どもや高齢者がその被害に遭う犯罪や、国民に大きな不安を与える凶悪事件が発生するなど、国民の治安に対する不安は解消したとは言えず、また、犯罪被害者に対し適切な支援を行うことが必要であるため、安全で安心な国民生活を確保するための施策を推進する。
第7「警察基盤の充実強化」
依然として厳しい治安情勢に的確に対処するため、装備資機材・警察施設の整備、警察活動基盤を充実強化するための施策等を推進する。