2025/01/17
末松 寄せられた相談内容の例などいかがでしょう。
豊田 具体的な幾つかの事例として、長芋をアメリカ向けに船で出したいと考えているが相談に乗ってほしい、レンコンを海外向けにチャレンジしたいが一緒に取り組めないか、行政として輸出実績を伸ばしたいが何か協力をしてもらえるか、いちごを現状大手市場へ出荷をしているが、将来を考え輸出も販路の一つとして考えているので相談に乗ってほしい、など生産者の方のみならず行政機関、輸出業者の方々まで、当初想定していたよりも裾野が広くあらゆる業界の方々からのお問い合わせをいただき、商談を行う事で、当社としても非常に勉強になりましたし、そのご縁からの紹介や推薦でまた話が広がったりしているので、どんな内容でもまずはしっかりお伺いをし、グループ各社力を合わせて、今より改善に繋がるようなお戻しができないかを皆で一緒に考えていく、という取り組みを続けております。
また、英字、簡体字、繁体字、日本と4カ国語のLPサイトを立ち上げたことで、海外のバイヤーさまからも直接お問い合わせをいただくことも増えております。総じて、皆さまそれぞれ業種は違うとしても、輸出入にあたり現状の実態が適正なのか、もっとよい選択肢はないのかを模索されており、お打ち合わせを続ける中で、当社としても、何かしらの商売の隙間、可能性のようなものを感じております。まだまだ地道にこの活動は継続をして参りたいと考えております。
末松 サービス内容が15項目にわたるとのこと、そのマネタイズなどはどのようにされているのでしょうか。
豊田 利用していただくサービスそれ自体については、ご利用料等はいただいておりません。当社は青果市場ですので、例えば生産者の方が当社に青果物を出荷していただくことが、何よりの実績となりますし、物流のご相談から商売が進むケースなどはグループとしての物流構築、仕組み作りに貢献と、商売には繋がらずとも関係各社をお繋ぎし、前に進めるお手伝いが出来れば、また別の機会で違った角度の商売のご相談がくるといった流れで、シティ青果成田市場にとりあえず問い合わせをすれば相談に乗ってくれるという口コミのようなものが広がれば、時間はかかるかもしれませんが、差別化された貿易市場としての機能を知っていただき、結果当社のサービスをきっかけに、ご相談から始まったお話がスポット対応から継続商売となり、結果ビジネスが広がっていくという状況を作り出せたらと考えております。
末松 では、新たに注力すべき当面のテーマなどございましたら。
豊田 実はまさしく、前述したように成田市場での船便の機能強化に力を入れています。なぜ船を出すのにわざわざエアーとしての成田で、とお思いになるでしょうが、実は成田市場で検疫・通関・バンニングを行い、港までドレー輸送等の一連の作業を当社完結でトータルサービスを行うとした場合、輸出業者さまにとって、現状より成田から輸出をする方が品質・コスト共にメリットがあるとのことで、この8月にも台湾に向けて当社として初めて、成田市場から船便の手配を行いました。エアーと比べて物量や時間的制約など多くの課題が発生した中、成田市さま、植物検疫所の皆さまが非常に協力的にサポートをしてくださり、無事に現地までお届けすることが出来ました。
今後はさらにこのビジネスを深く掘り下げていき、現状商売の開始時はエアーが多いですが品目や物量によっては船で出すのが効果的であるというケースはお取引の中で当然出てきますので、その両方をトータルサービスとしてシティ成田が引き受けられるという、関係者の方々において輸出入において、お問い合わせの幅が広がってくればビジネスも拡大していくと考えております。成田は空だけではなく海もいけるぞ、と(笑)。
末松 空港に近いというメリットだけでなく、船便も含めて多様なオペレーションがこちらで完結するという機能優位性が広く認識されれば、市場としての利活用の幅が大いに広がりますね。
豊田 まずは当社のサービスを沢山の方々に知っていただき、確かな実績を積み上げていくことが大切で、その結果、やはり実績を持つ輸出入業者さまであればあるほど、案件や品目ごとにエアーと船を使い分けていらっしゃるという印象があり、そうした方々にとっての受け皿、使い勝手の良さ、機能としての優位性などを広くご認識をいただければ、今よりももっと多くの方々に当市場をご利用いただける機会が増えていくのではと考えております。
新たに、モンゴル市場の開拓を
末松 海外の販路開拓についてご苦労された点などいかがでしょう。
豊田 やはり現地の人の繋がりをどのように作っていけるか、そこから商売のフローを踏まえた座組をお客さま目線でしっかり構築ができるのか、関係者全員顔が見えてすぐに連絡の取れる環境・体制をつくっていく、実はそこがすごく大切なのではと感じております。文化の違う方々と、鮮度の高い農産物を、各種の工程を経て定期的にお客さまに届けるにあたり、やはり国内のそれ以上に、海外ではいろいろなトラブルが起こります。それらをいかにスピーディーにお客さま目線で寄り添いつつ、対応をしていけるか、そのあたりの柔軟性とスピード感、信頼できる現地企業や人との接点、人脈が結果的には、続いていくビジネスの根幹になるのではと考えます。
スタート当初はそのあたりの関係構築や、仕組みが全く分からない状態でとりあえずお客さまからのご要望に精一杯お応えしつつ、まずはやってみよう、その上で失敗をしたらそれも経験というスタンスで成田市場の関係者がチームとなって取り組んできた経緯があります。今では、それらの失敗や経験を生かし、各国に対してのアプローチが、特に事前準備や情報の観点において、少しは役に立っているのではと感じております。
末松 現地への輸出過程においても課題となったことなどは。
豊田 こちらもスタート当初は失敗続きでした。輸送中の航空機の振動でブドウの粒が房からほとんど脱粒してしまったり、日本に比べて現地での検査・検疫に1週間近く要したため鮮度が落ち、売り場に並べることができなかったケースなどもありました。
この点、輸出事業の経験が豊富な諸先輩の方々から、ロスやトラブルに対するサポートとして、輸出保険への加入を勧められたのです。もちろん保険加入料はかかりましたが、出荷時に商品の状態を写真で記録しておいて、トラブル発生時に、現場の詳細を提出するとほとんど保険でカバーされるなど、結果的には大変有効なサポートが得られました。こうした経験も、われわれが輸出事業を手探りで進めた結果、蓄積できたノウハウとなっております。
末松 新たな市場開拓として有望そうな国などはいかがでしょうか。
豊田 この夏、私が飛び込みで営業してきたのがモンゴルです。実は、モンゴル現地の輸入農産物はほぼ韓国産で占められている印象です。しかし、そんなモンゴルでも日本産の品目は大変人気がある事がわかり、しかし現場の販売サポートまでやりきる日本企業がこれまでほとんど無かった事を知りました。また、新生成田市場のモンゴル版とも言うべき民間の保税倉庫が、ウランバートル空港の一角に設営段階に入っていることが、現地で関係者と商談を続ける中で判明しました。モンゴル政府としても、成田とウランバートルの両空港をつないで貿易を活性化したい、課題はいろいろとあるが是非前向きに取り組みを、という声を現地で直接お聞きする事が出来ました。文字通りのフロンティアですので、成田市さんをはじめ行政の方々と一緒に新たな開拓へのチャレンジを始めたところです。