2024/12/01
末松 改めて、御社が提供する〝スキマバイト〟の仕組みとメリットについてご解説をお願いできましたら。
小川 サービス自体は非常にシンプルな仕組みになっています。弊社のサービスに、人手が欲しい企業とスキマ時間に働きたいワーカー双方が事前登録し、企業は「飲食店経験者」「体力に自信のある人」などマッチング条件を設定した上で、業務内容、労働日時、報酬を提示、ワーカーは働きたい時間や場所の仕事を探して申し込み、アプリ上の確認事項をクリアして申し込みが確定、実際の現場で働いた後、即日で給与を受け取ることができます。
企業サイドは、専用の管理画面から簡単に募集ができるため今働ける人がすぐ見つかります。マッチングしたワーカーの基本情報や過去に働いた職場での評価は事前に管理画面から確認できます。またワーカーはいま働ける仕事がすぐに見つかり、面接や履歴書無しで働けます。登録、仕事の検索、申請、キャンセル時の連絡、給与の受け取りまで、スマートフォンで完結することが可能です。
ワーカーへの給与は弊社が一時立て替えつつ、企業に対して月末に一括して利用料を支払ってもらい、弊社はそこから交通費を含む合計報酬額の30%を、システム手数料として収入を得るというフレームになります。
またバックエンド側にあたる雇用契約、労務管理、勤怠管理機能を提供している点も弊社サービスの大きな特長です。後述する農業法人においても、雇用契約や給与支払い等、煩雑な処理を要するため、なかなかこの種のサービスに親しめないという経営者の方も少なくないと思いますが、弊社のサービスはそうした付帯手続きが一切なく簡単に使えるので、普段ITサービスに接する機会の少ない個人農家さんでもすぐに利用できる点が強みです。こうした信頼性の確保と煩雑さを極力少なくした手軽さの両立が、多くの利用者に受け入れられている理由だと認識しています。
末松 諸手続きの負担を軽減されているとのこと、こうした短時間労働の場合、税や社会保障の取り扱いなどが煩雑かつ不透明になりがちですが、この点はどうクリアしているのでしょう。
小川 弊社サービスでは、源泉徴収、法定調書について労務管理機能を備えています。例えば日当報酬9300円を超えると源泉徴収すなわち徴税が発生してしまうので、弊社ではこの9300円を超えないよう上限設定しており、源泉徴収に関する事務手続きが発生しません。そのほかにも社会保険加入・継続雇用が発生する月8万8000円、給与支払報告書、マイナンバー回収、源泉徴収票が必要となる年間30万円にも制限を設けており、それぞれ当該の額を超えない枠内で給与の支払い・受け取りを行います。税や社会保障に係る事務が生じないため企業労務の負担軽減となり、また税務状況がクリアであることから自治体の方にも喜ばれています。
ポイントは自己承認欲求の充足
末松 企業サイドの事業分野、またワーカーさんの属性などはどのような状況でしょうか。
小川 事業分野としては、本年4月時点で、物流の軽作業が44%、飲食業26%、販売21%と、この3分野が大部分を占めています。やはり倉庫のピッキング作業、飲食店の配膳、スーパーの品出しや調理補助等は需要が高いところです。他方ワーカーさんは学生さんと社会人の方が約3割ずつ、これにパート・アルバイト、専業主婦・主夫の方が続いています。属性に連動して年齢層も10~30代で7割近くを占めていますが、60代以上のシニア層の方も数%おり、右肩上がりで比重を増してきています。
末松 シニア層増加の背景を分析すると?
小川 余暇の時間を有効活用し、働くことによって社会貢献したいというニーズが高いようです。また事業者、ワーカー双方が「グッド」「バッド」を付ける相互評価の仕組みを導入しています。年齢を重ねるにつれて他者から褒められる機会も減る傾向にありますので、良い評価をもらえると承認欲求が満たされるという声も聞いています。
末松 これら一連のサービス提供の結果、現在の事業規模としては。
小川 2024年9月時点で従業員数は約1200人、北海道から沖縄まで事業拠点を設け、地場に根付きながら営業活動を展開しています。2024年9月時点で導入事業者数13万6000社、登録ワーカー数900万人、昨年の売上高が約160億円となり、7月26日に東京グロース市場に上場することができました。成長率は前年比2・6倍で、スタートアップとしてスピード感ある成長に手応えを感じています。
末松 導入事業者、登録ワーカー双方から御社が信頼を獲得しているが故の成長だと思うのですが、小川代表がその信頼を実感できるのはどのような場面でしょう。
小川 人口減が顕著になるほど、むしろ弊社への信頼が高まっていくように思います。労働人口が6000万人という人手不足の時代に、900万人のワーカーが利用しているタイミーに相談すれば人手を確保できるという安心感をもってもらえますから。この安心を担保するというポジションを構築できている限り、成長は見込めると考えています。