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外国人材の受け入れについて/出入国在留管理庁 永田雄樹氏

新たな制度の創設と共生社会の実現に向けた主要論点

ながた ゆうき/1976年10月17日生まれ、山形県出身。新潟大学卒業。平成14年法務省入国管理局(現・出入国在留管理庁)採用、外務省経済局、総務省自治行政局、在タイ日本国大使館等を経て、令和5年4月より現職。
ながた ゆうき/1976年10月17日生まれ、山形県出身。新潟大学卒業。平成14年法務省入国管理局(現・出入国在留管理庁)採用、外務省経済局、総務省自治行政局、在タイ日本国大使館等を経て、令和5年4月より現職。


 少子高齢化人口減が年々深刻化するわが国で、今や外国人材は国民生活、経済社会の維持継続において不可欠な存在。政府は専門的・技術的分野の外国人を積極的に受け入れる方針である一方、既存の技能実習制度に替わる新たな制度の創設を目指して検討を進めている。未来の共生社会実現へ向けて国、産業界はどのような対応が求められるのか、永田室長に現段階の主要論点を解説してもらった。


出入国在留管理庁政策課政策調整室長
永田 雄樹氏



 周知のとおり日本の少子高齢化人口減は進行の一途をたどり、さまざまな産業・労働分野で人手不足が深刻化しつつあります。これに対して多様な主体の就労促進やDX・AIの利活用等による効率化などの方策が図られていますが、これらのみでは人手不足を補うには至らないとの観点から、外国人労働者に日本に来て働いてもらうことを真剣に議論すべき段階にきていると認識しています。

 他方、外国人材の受け入れについては国際的にも人材獲得競争が激しくなっていることから、労働先として日本が選ばれるためにはどのような施策が必要か、人権保護はもちろん賃金も含めた労働条件の充実、安心安全に暮らせる生活環境の構築等々の受け入れ環境整備の議論も同時に進めていく必要があります。出入国在留管理庁では、外国人の受け入れ環境整備に関する総合調整を担う立場として、各種取り組みを鋭意推進しています。

「専門的・技術的分野」は積極的に

 これまで、日本における在留外国人および外国人労働者は、東日本大震災やコロナ禍等の影響により多少の凹凸はあるものの一貫して右肩上がりで伸長し、2022年末時点で在留外国人数は307万5213人、外国人労働者数は182万2725人、総人口に占める在留外国人の割合は2・46%を占め、増加傾向にあります。また、13年当時と直近23年の在留資格別構成比の推移を比較すると、「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」などの、日本での就労を目的とした在留外国人の比率が10年前と比べて大幅に増加しています。

 国別の動向としては、単純に人数では中国、韓国など近隣アジア諸国が多いのですが、近年では、人数、構成比ともベトナムの方々が急速に増え、その他の東南アジア近隣の方々の比率も増加しています。また、それ以外の多くの国々が含まれる「その他」の比率も増えているなど、多国籍化がより進んでいることが表れています。

 この点、日本政府は、外国人労働者の受け入れに関して、「専門的・技術的分野」に関しては積極的に受け入れ、「上記以外の分野」についてはさまざまな検討を要する、そしてその検討は、ニーズの把握や受け入れが与える経済的効果の検証、教育や社会保障等の社会的コスト、日本人の雇用も含めて産業界全体に及ぼす影響、受け入れに伴う環境整備や治安などについて、国民的コンセンサスを踏まえつつ行われなければならない、という方針をとっています。一方、政府としては、国民の人口に比べて相当規模の外国人の方々を、家族も含めて期限を設けず受け入れて国家を維持していくという意味での政策、いわゆる移民政策をとる考えはありません。

 日本における在留資格は、大きく「就労が認められる在留資格(活動制限あり)」「身分・地位に基づく在留資格(在留制限なし)」「就労の可否は指定される活動によるもの」「就労が認められない在留資格」に分類され、特定技能や技能実習は「就労が認められる在留資格」に含まれます。

 高度外国人材については積極的に受け入れを進めるとしているところですが、これに関しては、23年春より「特別高度人材制度(J-Skip)」という新たな制度を創設しました。これまで高度外国人材はポイント制によって在留資格を決定していたのですが、新制度ではポイント制によらず学歴または職歴と年収が一定水準以上であれば「高度専門職(1号)」を付与し、さらなる追加優遇措置を講じるという内容です。また、海外の若い優秀な人材を呼び込むため、一定の要件を満たせば在留資格「特定活動」を付与する「未来創造人材制度(J-Find )」という制度も同時に新設しました。これによりポテンシャルの高い若い外国人材が最長2年間、就職活動や起業準備活動などもできるようになりました。

「技能実習」制度と「特定技能」制度

 さて、技能実習制度の見直しに関する議論がしばしば最近の報道等で取り上げられているかと思います。もともとは国際貢献のため、開発途上国等の外国人を日本で最長5年までという一定期間受け入れ、実務研修(OJT)を通じて技能を当該国に移転する制度で、1993年にスタートし、2023年6月の時点でベトナムからを中心に全国に約36万人の技能実習生が在留しています。すなわち国際貢献に資するために、外国人の方々に技能を身に着けていただくのが制度の目的で、本来は人手不足に対応する制度として位置付けられてはおりません。しかしながら、実態としては、これまで現場での労働者を求める企業の人手不足を埋める側面などが指摘されてきました。就労にあたっては通常、監理団体が雇用契約やあっせんなどの事務手続きを担い、建設や食品製造、機械・金属関係をはじめ、90職種165作業(令和5年10月31日時点)を対象に、各国から受け入れた技能実習生が活躍しております。

 一方、技能実習制度とは別に、より直接的に人手不足分野において活用されているのが、特定技能制度です。これは、深刻化する人手不足への対応として、生産性の向上や国内人材の確保のための取り組みを行ってもなお、人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野(「特定産業分野」)に限り、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れるため2019年に創設された制度です。一定の専門性・技能を有することが前提となりますので、この在留資格で受け入れる外国人材は、先ほどの外国人労働者の受け入れに関する政府方針との関係では、専門的・技術的分野の外国人という位置付けとなります。

 制度の概要としては、対象となる特定産業分野を、①介護、②ビルクリーニング、③素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、④建設、⑤造船・舶用工業、⑥自動車整備、⑦航空、⑧宿泊、⑨農業、⑩漁業、⑪飲食料品製造業、⑫外食業、の12分野とし、該当する分野に属しつつ、相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する特定技能1号と、熟練した技能を要する業務に従事する特定技能2号があります。制度の創設後、コロナ禍を経ながらも一貫して特定技能在留外国人数は増加を続け、23年11月末時点の速報値で、1号は20万1307人、2号は29人の在留者数となっています。1号の在留期間は通算で上限5年までとなっており、家族の帯同は基本的に認められませんが、2号は在留期間の更新に制限がないため、更新を許可され続ける限り在留の継続が可能であることに加え、要件を満たせば配偶者や子の帯同が認められます。

 現時点での2号の在留者数は少ないですが、昨年6月の閣議決定により、介護以外の11分野でも2号として受け入れが可能となりました。現在、さらに新たな特定産業分野の追加に向けて関係省庁において検討を続けています。追加手続のおおまかな流れとしては、関連業界等と調整の上で、追加を希望する分野を所管する行政機関から、人手不足の状況、生産性向上や国内人材確保のための取り組み、賃上げを含む処遇改善のための取り組みなどを客観的に説明する資料等を法務省に提出していただきます。これを関係機関で検討し、基本方針の変更・分野別運用方針案の作成等を行い、閣議決定を得られれば法務省令等を改正して新たな分野を加える、というプロセスを取ることになります。人手不足がさらに深刻化する今後、特定産業分野に追加される業種は増加することが見込まれます。

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