
2025/04/07
国土の総合的かつ体系的な利用、そして開発と保全に加え、社会資本整備などを担う国土交通省。発生から1年が経過した「令和6年能登半島地震」の復旧・復興に向けた取り組みをはじめ、令和6年度の施策・取り組みにはどういったものがあったのか。また令和7年度の基本戦略に掲げられた①国民の安全・安心の確保、②持続的な経済成長の実現、③地方創生2.0 の推進――とはどういった取り組みなのか。その具体的な部分について国土交通省総合政策局政策課の高藤課長に話を聞いた。
総合政策局政策課長 高藤 喜史氏
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令和6年度の施策と能登の復旧・復興に向けた取り組み
――国土の総合的かつ体系的な利用、開発および保全、そのための社会資本の整合的な整備、交通政策の推進、気象業務の発展ならびに海上の安全および治安の確保などを担う国土交通省。改めて令和6年度はどういった施策・取り組みを進めてきたのでしょうか。
高藤 まず、令和6年能登半島地震や各地を襲った豪雨など大規模自然災害からの復旧・復興について、国土交通省の総力を挙げ、全力で対応するとともに、そうした災害の教訓を踏まえながら、防災・減災、国土強靱化を強力に推進してきました。加えて、運輸分野や通学路などの安全対策、海上保安能力の強化などにも取り組んできました。
また、デフレからの脱却を確実なものとするため、わが国の成長力を高めるべく、戦略的・計画的な社会資本整備や地域間のネットワーク強化、さまざまな産業分野における担い手の確保、GX・DXの推進などに取り組んできたところです。
あわせて、各地域がその特徴を生かしつつ、持続可能であり続けられるよう、地方への人の流れを拡大し、地域の雇用や経済を拡大するとともに、公共交通など暮らしに必要なサービスの維持にも努めてきました。
――「令和6年能登半島地震」の発生から1年が経過しました。復旧・復興の状況をはじめ、災害との関り、その進捗についてお聞かせください。
高藤 まず、令和6年能登半島地震、その被災地を襲った9月の豪雨でお亡くなりになられた方とそのご家族に対し、心よりお悔やみ申し上げます。また、被災された全ての方々に心からお見舞い申し上げます。
国土交通省としては、被災者の方々の暮らしと生業の再生を支える大前提は、インフラの復旧やまちの復興にあるとの考えに立ち、各種事業に取り組んできました。
その結果、昨年9月の豪雨災害を含め、二次災害に直結する切迫した被災箇所の応急対策はすべて終了し、インフラの機能回復、本復旧なども着実に進んでいます。特に、道路については、昨年のうちに全ての集落などへのアクセスを再度確保したほか、国道249号沿岸部において、輪島市門前町から珠洲市の間の通行を確保しました。また、断水も建物倒壊地域などを除き、解消しています。
今後は、出水期前までに、河川や土砂災害に係る応急的な安全対策を完了させ、その他のインフラについても、できるだけ完了時期を明示しながら、本復旧・本格対策を着実に進めます。さらに、災害公営住宅など、恒久的な住まいの確保に対する支援にも取り組み、被災地の一日も早い復旧・復興に貢献していきます。
令和7年度、国土交通省の進める基本戦略
――では令和7年度、国土交通省の進める基本戦略としてはどういったものがあるのでしょうか。
高藤 まずは、令和6年能登半島地震をはじめとする大規模災害からの復旧・復興に全力で取り組み、一日も早く、安全と活力を取り戻せるよう努めていきます。その上で、①国民の安全・安心の確保、②持続的な経済成長の実現、③地方創生2・0の推進――この三つを柱に、関連施策を着実に推進していきます。
――基本戦略の具体的な内容について伺わせていただきます。まず①国民の安全・安心の確保についてお聞かせください。
高藤 まずは、自然災害への対応です。これまでも「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に基づく取り組みなどを着実に推進してきましたが、自然災害が激甚化・頻発化する中、さらなる取り組みが必要だと考えています。
具体的には、気候変動により水災害が激甚化・頻発化する中にあっても国民の安全・安心を確保するため、「流域治水」の取り組みを加速化・深化していきます。また、流域のあらゆる関係者が協働し、流域治水、水利用、流域環境に一体的に取り組む「流域総合水管理」を推進していきます。
大規模災害に備えた災害対応力の強化も重要だと思っています。線状降水帯・台風などの予測精度向上に向けた取り組みを着実に進めるとともに、被災自治体を支援し、応急対応を迅速に進めるためのTEC-FORCEなどの支援体制・機能の充実強化に努めていきます。
そして、インフラの老朽化についてです。広域・複数・多分野のインフラを群として捉え、施設管理者が連携して対応する「地域インフラ群再生戦略マネジメント」を進めるなど、予防保全への本格転換を図っていきます。
さらに、昨年4月から上下水道一体となった体制のもと、強靱で持続可能な上下水道システムを構築していくため、耐震化状況の緊急点検結果を踏まえた上下水道施設の耐震化を計画的・集中的に進め、上下水道の災害対応力を強化していきます。
また、国土強靱化実施中期計画については、関係省庁との連携の下、施策の評価や資材価格の高騰などを勘案し、5か年加速化対策を上回る水準が適切との考えに立ち、本年6月を目途に策定できるよう、しっかりと取り組んでいきます。
自然災害への対応に加え、輸送の安全確保に取り組んでいくことも重要です。昨年1月には、羽田空港において航空機の衝突事故が発生し、被災地への支援物資輸送に向かう海上保安庁職員五名が亡くなりました。改めて心より御冥福をお祈り申し上げます。航空分野に限らず、輸送の安全確保は、国土交通省、そして交通事業者にとっても極めて重要な使命です。事業者や施設管理者などにおける安全管理体制をしっかり確保することなどにより万全を期していきます。また、通学路などの交通安全対策にも取り組んでいきます。
さらには、近年、尖閣諸島周辺海域において、中国海警局に所属する船舶による領海侵入や日本漁船に近づこうとする事案が繰り返し発生するなど、わが国周辺海域の情勢は一層厳しさを増しています。こうした情勢も踏まえ、海の安全・安心の確保という観点から、海上保安能力のさらなる強化を進めているところです。
このほか、誰もが安心して参加し、活躍することが可能な、若者・女性を含む共生社会の実現なども推進していきたいと考えています。