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物流の持続的成長の実現に向けて/国土交通省 平澤崇裕氏

物流革新緊急パッケージの概要

――緊急パッケージは経済対策をはじめ、2024年問題など物流の抱える諸問題に対して、緊急的に取り組むべき具体的な対応をまとめたものとのことですが、その内容についてお聞かせください。

平澤 緊急パッケージの位置付けとしては、6月に示された政策パッケージのうち、緊急的に取り組むべき施策をまとめたものになります。緊急パッケージでは、⑴物流の効率化、⑵荷主・消費者の行動変容、⑶商慣行の見直し――を3本柱に具体的な対応が盛り込まれました。

 まず ⑴ 物流の効率化では、①即効性のある施設投資・物流DXの推進として、物流施設の自動化・機械化の推進や港湾物流手続等の電子化の推進(サイバーポート)、さらに将来の自動運転の実用化を目指して自動運転トラックを対象とした路車協調システム等の実証実験などを掲げています。また②モーダルシフトの推進では、鉄道、内航海運の輸送量・分担率を倍増させるべく、コンテナ大型化等を推進、③トラック運転手の労働負担の軽減、担い手の多様化の推進では、テールゲートリフター等、荷役作業の負担軽減に資する機器等の導入強化や大型・けん引免許取得等のトラック運転手のスキルアップ支援、④物流拠点の機能強化や物流ネットワークの形成支援では、農産品等の流通網の強化、モーダルシフト等に対応するための港湾施設の整備等、そして高規格道路整備等による物流ネットワークの強化やSA・PAにおける大型車駐車マスの拡充等が盛り込まれています。それ以外にも⑤標準仕様のパレット導入や物流データの標準化・連携の促進、⑥燃油価格高騰等を踏まえた物流GXの推進、⑦高速道路料金の大口・多頻度割引の拡充措置の継続、⑧道路情報の電子化の推進等による特殊車両通行制度の利便性向上――などがあります。

平澤 二つ目の柱である⑵荷主・消費者の行動変容では、①宅配の再配達率の半減に向けた緊急的な取組と②政府広報やメディアを通じた意識改革・行動変容の促進強化を示し、三つ目の柱の⑶商慣行の見直しでは、①トラックGメンによる荷主・元請事業者の監視体制の強化、②現下の物価動向の反映や荷待ち・荷役の対価等の加算による「標準的な運賃」の引き上げ、③適正な運賃の収受、賃上げ等に向け、次期通常国会での法制化を推進――が盛り込まれています。

持続可能な物流の実現に向けて

――物流の革新に向けて、さまざまな施策に取り組まれているわけですね。では、それ以外の取り組みとして今後も物流の品質を維持していくために重要なものとしては何があるのでしょうか。

平澤 物流の質やサービスを維持していくためには、荷主や物流事業者、また消費者といった関係者全員の取り組みが非常に重要になります。消費者の取り組みについて補足するのであれば、例えばECサイトで注文するときに、荷物を確実に受け取れる日時や場所の指定、宅配ボックス・ロッカーの利用や置き配の活用などを行うことで、再配達削減などの物流負荷軽減につながります。そして、商品をまとめて注文するなどして運送回数を削減するといった取り組みも意識を少し変えるだけで実現可能で有効な物流課題解決方法といえます。また、「総合物流施策大綱」でも触れていますが、今後、ドライバーをはじめ、産業の担い手が不足する中で、物流事業者間における協調領域の取り組みが重要になってくると考えています。この協調領域の具体例が標準化になりますので、事業の効率化に向けて協調できるところは協調し、別の部分では競争する。そうした事業環境の構築が今後の物流産業においては理想的といえるのではないでしょうか。

――さまざまな要因から変革を余儀なくされる物流。最後に物流政策の今後の展望、あるいは持続可能な物流の実現に向けた想いや意気込みについてお聞かせください。

平澤 現在、関係省庁が一体となって物流の革新に向けた取り組みを進めています。そのメニューについては6月に政策パッケージとして示していますし、10月には緊急パッケージも取りまとめられました。これらのパッケージの実効性を確保するよう、荷主や物流事業者といった関係者、そして消費者の方々のご理解とご協力をいただきながら、われわれも物流の持続的成長の実現に向けて精一杯取り組んでいきたいと考えています。
                                               (月刊『時評』2023年12月号掲載)