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平和で美しく豊かな「海」を次世代に継承していくために/海上保安庁長官 瀬口良夫氏

◆海上保安政策最前線

せぐち よしお/昭和39年1月生まれ、愛知県出身。海上保安大学校卒業。平成24年海上保安庁警備救難部警備情報課警備情報調整官、25年対馬海上保安部長・厳原港長、26年第五管区海上保安本部警備救難部長、27年海上保安庁総務部政務課政策評価広報室長、28年海上保安庁警備救難部管理課長、30年第十管区海上保安本部次長、令和2年4月第九管区海上保安本部長、同年10月海上保安庁警備救難部長、3年海上保安庁海上保安監、4年海上保安庁次長を経て、6年7月より現職。
せぐち よしお/昭和39年1月生まれ、愛知県出身。海上保安大学校卒業。平成24年海上保安庁警備救難部警備情報課警備情報調整官、25年対馬海上保安部長・厳原港長、26年第五管区海上保安本部警備救難部長、27年海上保安庁総務部政務課政策評価広報室長、28年海上保安庁警備救難部管理課長、30年第十管区海上保安本部次長、令和2年4月第九管区海上保安本部長、同年10月海上保安庁警備救難部長、3年海上保安庁海上保安監、4年海上保安庁次長を経て、6年7月より現職。

 豊富な資源を有し、多くの恩恵を与えてくれる「海」。同時に海は海上犯罪や国家間の主権主張の場となる面も持っている。世界有数の海洋国家であるわが国の海を守る海上保安庁の取り組みについて、今夏、第48代海上保安庁長官に就任した瀬口長官に改めて海上保安庁の業務から、近年緊張感を増している周辺海域の情勢とそれに備えるべく進めている海上保安能力強化の取り組みや国際連携の現状、そして今後の展望について話を聞いた。

――広大な海に四方を囲まれ、世界有数の海洋国家でもあるわが国。海はさまざまな恩恵を与えてくれる一方で海難や犯罪、領土や海洋資源の帰属などで国家間の主権主張の場になります。近年、周辺海域をめぐる情勢が緊張感を増していることもあり、海上保安庁の果たす役割の重要性が高まっていますが、改めて海上保安庁の業務についてお聞かせください。

瀬口 わが国は、広大な領海と排他的経済水域を有する世界屈指の海洋国家であり、貿易、漁業、マリンレジャーなど多くの分野で「海」からの恩恵を受けています。

 他方、海は国民生活を脅かすテロや密輸・密航、漁業秩序を乱す密漁、人命や財産のみならず、海洋環境や経済活動にも影響を与える海難など、さまざまな事案が起こる場所でもあります。

 海上保安庁は、1948(昭和23)年の創設以降、脈々と受け継がれる「正義仁愛」の精神のもと、国民の皆さまが安心・安全に暮らすことができ、さまざまな恵みをもたらす豊かな海を後世まで引き継ぐべく、領海警備、治安の確保、海難救助、海上防災、海洋環境の保全、海洋調査、海上交通の安全確保などの多種多様な業務に従事しています。

わが国周辺海域の情勢と激甚化・頻発化する自然災害への対応

――緊張感を増すわが国周辺海域、近年の具体的な情勢についてお聞かせください。また本年1月「令和6年能登半島地震」が発生しましたが、激甚化・頻発化する自然災害に対する海上保安庁の対応としてはどういったものがあるのでしょうか。

瀬口 近年のわが国周辺海域をめぐる情勢については、尖閣諸島周辺海域における中国海警局に所属する船舶による活動、大和堆周辺海域における外国漁船による違法操業、北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイルの発射、そして、わが国の同意を得ない外国海洋調査船による調査活動や覚せい剤などの密輸事犯など、依然として予断を許さない厳しい状況にあります。

 尖閣諸島周辺の接続水域においては、ほぼ毎日、中国海警局に所属する船舶による活動が確認されており、2023年の年間確認日数は352日で過去最多を更新しました。また、接続水域における連続確認日数については、昨年12月から本年7月にかけて、過去最長の215日となりました。

 加えて、20年以降、尖閣諸島周辺のわが国領海において、中国海警局に所属する船舶が操業などを行う日本漁船に近づこうとする事案が多発しているほか、中国海警局に所属する船舶の勢力増強や大型化・武装化も進んでいます。

 海上保安庁では、引き続き、わが国の領土・領海を断固として守り抜くという方針の下、関係機関と緊密に連携し、冷静に、かつ、毅然とした対応を続けています。

 そして日本海に目を移すと、日本有数の好漁場である大和堆周辺のわが国排他的経済水域においては、外国漁船による違法操業が確認されるなど、依然として予断を許さない状況が続いています。海上保安庁では、大型巡視船を含む複数の巡視船を配備し、水産庁取締船と連携しつつ、日本漁船の安全を最優先に対応しているところです。

(資料:海上保安庁)
(資料:海上保安庁)

 また、近年、台風・豪雨による水害や地震などの自然災害が国内の至る所で頻発し、激甚化する傾向にあります。

 本年1月には、石川県能登地方を震源とするマグニチュード7・6の地震が発生し、最大震度7を観測するとともに、各地で地震による津波も観測されました。

 海上保安庁では、発災後ただちに巡視船艇・航空機などを発動させ、被害状況の調査や行方不明者の捜索を実施するとともに、航行警報などを発出し、付近航行船舶などへの情報提供を行いました。加えて、石川県などからの要請に基づき、巡視船艇・航空機などによる救急患者などの搬送、支援物資の輸送や給水支援を行うとともに、測量船などによる港内調査を速やかに実施し、海上輸送ルートの確保に貢献しました。

 引き続き、長年の海難救助などで培った経験・技能や巡視船艇・航空機などの機動力を活用し、自然災害の対応にあたっていきます。

令和6年能登半島地震における海上保安庁航空機による支援物資の輸送 (資料:海上保安庁)
令和6年能登半島地震における海上保安庁航空機による支援物資の輸送 (資料:海上保安庁)