2024/09/11
――今回の特集「2050年カーボンニュートラル実現に向けて」は、前 環境副大臣・大岡敏孝氏、京都高度技術研究所副所長(京都大学名誉教授)・酒井伸一氏、日立造船株式会社代表取締役社長兼CEO・三野禎男氏をお迎えして、「GXを実現するための社会インフラシステム整備を目指して」と題し、座談会を進めたいと思います。今回は、特に「グリーンイノベーション基金」18分野のうち「廃棄物・資源循環分野」への展望について議論を深掘りしたいと思いますが、まず、アカデミアのお立場から酒井副所長、これまでのカーボンニュートラルに向けての政府の動きを整理していただけますか。
酒井 京都高度技術研究所副所長の酒井です。昨年3月まで京都大学で、環境工学、循環型社会システムを専門に研究していました。現在は、同研究所で、引き続き地域の皆さんと研究を続けています。環境省とは、中央環境審議会の循環型社会部会でご縁があり、もっぱら循環政策や廃棄物管理の政策づくりに向けての協働作業を行っていました。
お話いただいたカーボンニュートラルに向けてのこれまでの政府の動きを振り返りますと、2020年10月の所信表明演説で、菅義偉総理(当時)が「50年までにカーボンニュートラルを目指す」ことを宣言されたのが、エポック・メーキングになったと言えるでしょう。これに基づき、政府は、20年度第3次補正予算において、2兆円の「グリーンイノベーション基金」を創成し、現在、18分野の官民連携事業が進行しつつあるということです。その中の一つに「廃棄物・資源循環分野のカーボンニュートラル実現プロジェクト」構想も位置付けられ、検討が進められていると聞いています。
大岡 大岡敏孝です。先ほど、酒井副所長からご説明いただいた通り、菅前政権のカーボンニュートラル政策の流れを受けて、岸田文雄総理は、「今後10年間で150兆円超の投資を実現するため、成長促進と排出抑制・吸収を共に最大化する効果を持った『成長志向型カーボンプライシング構想』を具体化し、最大限活用していく」ことを公表されました。
現在、環境省の年間予算は、約3000億円ですから、10 年間で150兆円規模の投資を実施しようとすると、正直、相当気合を入れてやらないと間に合わないと認識しています。もちろん、従来の仕事の延長線上ではなく、新しい発想もどんどん取り入れる必要があるでしょう。まずは、われわれ政府がビジョンをきちんと示して、主役である民間の皆さんに投資していただけるような環境を整備していくことが肝要です。
――今、大岡副大臣から「民間が主役」との説明もありましたが、日立造船の三野社長は、貴社は、50年カーボンニュートラル実現に向けてどのように取り組んでおられますか。
三野 このたびは、このような貴重な機会をいただきありがとうございます。今回、大岡環境副大臣と酒井副所長からカーボンニュートラルに向けて、「廃棄物・資源循環分野」の議論ができるということで楽しみにして参りました。
当社は、17年に策定した長期ビジョン「Hitz 2030 Vision」の中で、グループの廃棄物処理・発電施設、風力発電、メタネーションなどの製品を含めた事業を拡大することとしており、30年には13年度比で、事業活動のCO2排出量50%削減を掲げています。できるだけ、50年よりも早いうちに、カーボンニュートラルを達成しようと、現在、全社を挙げてまい進しているところです。先ほどお話のあった政府のカーボンニュートラルに向けた目標は、民間においても浸透し、共有化されていますし、官学産金融、そして地域が一体となって、みんなで達成していこうという協働の意識も芽生えてきていると思います。