2024/09/11
柏木 今回は、衆議院議員で自民党国土強靭化本部長を長年務めておられる二階俊博氏と川崎重工業株式会社取締役会長金花芳則氏をお迎えして「国土強靱化の観点からわが国のエネルギー政策を展望する」というテーマで座談会を開催したいと思います。
脱炭素に向けた世界的な潮流に加え、ロシア・ウクライナ問題など国際情勢が非常に緊迫し、わが国のエネルギーをめぐる状況は大きく動いています。昨年10月に、国のエネルギー政策の基本的な方向を示す「第6次エネルギー基本計画」が閣議決定されたこともあり、国土強靱化の観点から、今後のわが国のエネルギー政策を見つめていくことは、非常に有意義なことではないかと考え、この鼎談を企画しました。
二階 今回、改めて金花会長と柏木教授のお話を伺えるので楽しみに参りました。
金花 貴重な機会をいただき、感謝申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。
柏木 私は、カーボンニュートラル時代に対するわが国の「国土強靱化」と「主力電源化」を考えた場合、水素が柱の一つになるだろうと見ています。と言いますのも、水素は、1次エネルギーと言われる天然ガスや石油、石炭から取り出されたり、水を電気分解して取り出される2次エネルギーと呼ばれ、貯蔵することができるという特長を持っているからです。実際、今年3月にも、宮城・福島両県で震度6強の地震が発生し、先月中旬まで東北新幹線などは一部運転見合わせという状況を余儀なくされました。つまり、自然災害の多いわが国では、「必要なときに」エネルギーとして活用できる水素が、国土強靱化の観点からも大きくクローズアップされていると思います。
実は、6年前の2016年時評6月号でも今回と同じ顔ぶれで「水素を使ってまちの電力発電を実現へ」(編集部注・座談会は、二階自民党総務会長×村山滋川崎重工業取締役会長×柏木東工大特命教授で実施・登壇者の名前、役職はいずれも当時)というテーマで座談会を実施し、やはり水素をテーマに取り上げ、議論を展開したことがあります。あのときは、川崎重工業からオーストラリアで採掘される褐炭(かったん)から水素を取り出し、船で水素を神戸に運び、発電などの実証実験を行う計画についていろいろ教えていただき、水素がこれから「主力電源」として活用できるかどうか議論しました。
ところが、当時と比べ、日本と世界の脱炭素化に向けての環境が大きく変わりました。特に、わが国の場合、20年10月に菅義偉前総理が「2050年にカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言されたのが大きなエポックとなりました。これを契機に、同年12月には経済産業省が「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。また、21年4月の地球温暖化対策推進本部およびアメリカが主催した気候サミットにおいて、菅前総理は、「30年度に温室効果ガスを13年度から46%削減することを目指すこと、さらに50%の高みに向け挑戦を続けること」を発言されました。つまり、30年度に温室効果ガス排出46%削減(13年度比)という中期目標と、50年度温室効果ガス排出実質ゼロという長期目標が表明されたことになります。
二階 「2050年カーボンニュートラル宣言」は、第203回臨時国会に菅前総理の所信表明演説で宣言されたわけですが、まさに総理自身が非常に脱炭素化に熱意を込めておられたわけですね。大変タイムリーで、英断だったと思います。
柏木 やはり、総理自らカーボンニュートラルと言われて、一挙に水素に対する注目度が集まりました。あのときは、二階議員が幹事長として、まさに菅前総理の政策を支えられたわけですよね。
二階 そうです。水素によって、私は日本の活路が見出されたと思うんですね。ですから今回も皆さんにいろいろなご指導をいただいて、政治も水素に力点を置いて進んでいくということが大事だと思います。
柏木 私も二階議員にそのようにおっしゃっていただければ、非常に心強いです。今年3月1日に閣議決定されたエネルギー5法案(省エネ法、高度化法、JOGMEC法、鉱業法、電気事業法)のうち、高度化法、つまり供給構造高度化法案は、そもそも二階議員が経済産業大臣時代に作られたのですからね。09年に私も国会参考人をやりましたからよく覚えていますが、水素が非化石エネルギーとしてきちんと法律によって位置付けられ、水素を使えば使うだけ、その企業は非化石エネルギー率が増えるという化石から非化石への流れができたわけです。