2024/03/07
森本 早稲田大学の森本英香です。今回は、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)活用やグリーン成長を通じたサステナブルな社会の実現に向けて」という座談会を企画し、内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、経済再生担当、新しい資本主義担当山際大志郎大臣と、民間企業からは、SAPジャパン株式会社内田士郎代表取締役会長をお招きしました。
岸田政権で重責を担われている山際大臣と忌憚なく議論できるということで、今から大変ワクワクしています。それでは最初に、山際大臣に伺います。サステナブルな社会を創るためには、DXやグリーンがカギになると思いますが、山際大臣は日本の現状をどのように見ておられますか。
山際 私は、これから先、日本は「デジタル技術を使わない限り、サステナブルにはならない」という共通認識を政府、地方自治体、国民全員が持つ必要があると思っています。残念ながら、日本はデジタル分野が相当弱く、諸外国に比べて遅れました。もちろん、昨年9月にはデジタル庁が発足し、政府も必死になって追いつこうとしていますが、現時点での日本の役所におけるデジタルの進捗状況は、DXの2段階前というところだと見ています。
森本 「時評」の読者は、中央省庁はじめ地方自治体首長も多いので、今の山際大臣のお話は、大変気になります。もう少し詳しくお話いただけますか。
山際 長くなりますが、わが国にとって大事なところなので、詳しく説明しましょう。率直に言って、日本の役所は、まだまだアナログという域にとどまっています。もちろん、私は、アナログ全てがNOと言っているわけではありません。時には、ペーパーなどアナログな情報が必要な場合もあります。
ただ、行政情報が全てアナログである必要はないんですよ。むしろほとんどデジタルな情報の方がこれからの住民サービスを考えると望ましいわけです。しかし、実際に役所に行くと、「紙に書いてください」といったようなアナログ情報がほとんどですよね。一般的には、「デジタイゼーション」(Degitization)と言われるデジタル化への第一段階ですが、こうしたアナログで行われている情報を、早急にデジタルの情報に変える必要があります。
次に、デジタルにされたデータがデジタル同士でやり取りされるということ、これがデジタライゼーション(Degitalization)で、デジタル化への第二段階なのです。本来であれば、この第2段階が役所内で一般的に行われていないといけないのですが、現実に、わが国で何が起こっているかというと、例えばEメールでデジタル化された情報が、途中でプリントアウトされたアナログな情報に変換され、仲間内でコミュニケーションが、アナログで行われています。従って、政府としては、このデジタライゼーションの段階に何とか持って行きたいと考えているのです。
と言いますのも、実は、こうした環境がそろって初めてデータを使って、イノベーションを起こし、新しい価値を生み出していけるわけです。すなわち、第3段階であるDX、まさにデジタルトランスフォーメーションですね。言い換えると、デジタルを使って新しい価値を生み出すのがデジタルトランスフォーメーションですから、まず、基盤になっている第2段階までは、しっかりと押さえておかねばならないということになります。従って、政府は、今、必死になって、この段階が押さえられるように、懸命に汗をかいているというのが実情なのです。
森本 なるほど。問題点をきちんと整理していただき、ありがとうございます。
山際 第3段階まで進むと、間違いなく民間の皆さんの方が得意なフェーズに入っていきます。まさしくビジネスになる部分ですから、民間の知恵を最大限、利活用することによって、DXが進められるというわけです。