2023/06/20
「デジタル田園都市国家構想」は、岸田政権が掲げる経済成長戦略三本柱の一つに位置付けられる重要施策として、その展開が各方面から注目を集めている。デジタル技術の発達が、これまでわが国積年の課題であった地方と都市の格差の是正、地域活性化に資するとして大きな期待が寄せられているのだ。担当相に就任後、各地域と精力的に意見をくみ交わす若宮大臣に、構想の理念と主要な四つの柱、先行する地域の取り組み等について熱弁をふるってもらった。(聞き手:本誌主幹・米盛康正)(写真:児玉大輔)
デジタル田園都市国家構想担当大臣
若宮 健嗣
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政策を構成する四つの柱
――まずは、大臣がご担当されている「デジタル田園都市国家構想」について、構想の背景や概要からお願いします。
若宮 同構想は、岸田総理が掲げる「新しい資本主義」における成長戦略の、最も重要な柱の一つです。地方を中心に高齢化・過疎化が進む中、直面する社会課題解決に向けて、地方にこそ新たなデジタル技術を存分に活用するニーズがあるのではないかということで、AIや5Gなど先端技術やデジタル技術を駆使し、地域の個性を生かしつつ活性化を図り持続可能な経済社会を実現していく、これが同構想の基本的な概念となります。昨年12月、令和3年度補正予算および令和4年度当初予算を合わせて関連施策等を取りまとめた「デジタル田園都市国家構想の全体像」をお示ししたところです。
また、「デジタル田園都市国家構想実現会議」において政策を構成する四つの柱に沿って分野ごとに集中的な議論を深めており、今春のいずれかの段階で、具体的な取りまとめをできれば、と考えています。
――では、四つの柱の内容について解説をお願いします。
若宮 一つ目は、デジタル基盤の整備です。デジタル庁主導の下、共通ID基盤やデータ連携基盤等を全国に整備します。また、5Gやデータセンターなどのデジタルインフラの整備が欠かせません。具体的には、2023年度末までに5G等の人口カバー率を9割に、十数カ所の地方データセンター拠点を5年程度で整備、また3年程度で日本を一周する海底ケーブルを完成、そして光ファイバーのユニバーサル化を図り30年までに99・9%をカバーするなどのデジタルインフラ整備を進めます。
二つ目がデジタル人材の育成・確保です。「デジタル田園都市国家構想」を実現するためにも担い手となるデジタル人材の育成・確保は不可欠であり、このソフトの充実こそ構想実現に向けて最も重要で、かつ難しい部分であると認識しています。目標としては、地域が抱える課題のデジタル化による解決をけん引するデジタル推進人材を、国全体として今後230万人必要であると設定し、22年度からの5年間で育成する方針です。大学での教育や職業訓練などを通じて育成されるさまざまな人材を活用して達成したいと考えています。
――問題は、育成・確保した後どう地域で活躍してもらうか、ですね。
若宮 はい、個別地域の課題解決にはどのようなスキルのデジタル推進人材が適合するのかという視点に立ち、地域企業との人材マッチング支援を行います。こうしたスキルを持った人材の中には、兼業・副業等により、都市部と地方の二地域・多地域で活動される方も増えてきています。一方、こうした都市部と地域の短期往復にとどまらず、地方に移住し、環境や文化を含めて地域のことをよりよく理解し、長期的にかかわっていきたいという方もおられるでしょうから、人材の地方移住促進も積極的に進めていかなければなりません。また、この際、外部からの視点を導入しつつも、人材が地域の一員であり、わがこととして活性化を考えてもらえるよう、しっかりと定着することを期待したいと思います。
こうしたスキルやノウハウを持つ外部の方が地域に定着し、地域の方々とともに協働して活躍できるようにしていくことは非常に重要で、私もいくつか地域を見てきましたが、エンジン役となるキーマンが経営的感覚を持って地域のさまざまな方を巻き込みながら、地域をコーディネートしているようなところは概して成果が挙がっているように見受けられました。こういう方が個人ではなく、多様なスキルを有した方々同士で連携する体制を組めればいろいろなものがかなり動き出すでしょう。そうするとまた関心のある人を呼び込み、動きが広がっていくという好循環が形成されるのではないでしょうか。