お問い合わせはこちら

Well-beingのまちづくり/森章浩(奈良県田原本町長)

「大和平野中央スーパーシティ構想」を起点に、磯城郡三町の価値を高める

森章浩(もり・あきひろ):昭和50年生まれ、奈良県出身。西大和学園中・高等学校、京都大学農学部卒業後、米国・Vanderbilt University  COPE留学。平成13年社会福祉法人愛和会に入り、27年まで朝和保育園園長を務める。28年1月より現職。現在、2期目。
森章浩(もり・あきひろ):昭和50年生まれ、奈良県出身。西大和学園中・高等学校、京都大学農学部卒業後、米国・Vanderbilt University COPE留学。平成13年社会福祉法人愛和会に入り、27年まで朝和保育園園長を務める。28年1月より現職。現在、2期目。

最近、「まちづくり」のキーワードにWell-being(ウエルビーイング)を追求していくという考え方が急速に広がりつつある。Well-beingとは、「幸福」「健康」を意味するが、デジタル化やダイバーシティが進む中、「人間」や「住民」を中心に据えた施策が大きくクローズアップされていることと関連がありそうだ。そこで、「時評」では、今月号から「Well-Beingのまちづくりを展望する」というテーマで特集を組み、中央省庁や地方自治体首長、学識経験者が進める政策やビジョン、考え方などをまとめてみることにした。第1弾は、奈良県田原本(たわらもと)町長・森章浩氏と弘前大学健康未来イノベーションセンター(医学研究科附属)副センター長・村下公一氏に話を聞いた。(聞き手・中村 幸之進)


奈良県田原本町
森 章浩

――奈良県荒井知事は、昨秋、「大和平野中央スーパーシティ構想」を提唱されました。田原本町は、まさにその対象とされ、ウエルネスタウンの整備などがうたわれています。

 私は、「大和平野中央スーパーシティ構想」の大前提は、町民の皆さんがいつまでも幸せに生活していただくための手段だと考えています。つまり、プロジェクトそのものが目的ではなくて、あくまでも住民のためのプロジェクトだと考えておりますので、いかに住民にそのべネフィットを還元していくか、あるいは日々の生活に心地よさを感じてもらえるかを目標にしていきたいと思っています。

――今回、同構想の対象になっている磯城(しき)郡三宅町、川西町も同様と考えてよいでしょうか。

 森田・三宅町長、小澤・川西町長ともコミュニケーションを取っていますが、その点は一致していると考えていただいてよいと思います。従って、三町の町民約4万5千人のウエルビーイングをいかに追求し、三町の価値を上げていけるかというのが、同構想のポイントだと言えるでしょう。

――価値を上げるとは、どのようなことでしょうか。

 まず、この三町は、奈良・京都・大阪方面への交通アクセスがすごく良く、人が集まりやすいという地の利があります。従って、今回、県が県立大学工学系第2学部の設置やウエルネスタウンを整備していただけるのに十分なポテンシャルがありますので、建設的な視点で三町のウエルビーイング追求の政策論議が進むのではないかと期待しています。もう一点は、「大和平野中央スーパーシティ」という枠組みの中で、三町がいかに戦略的に連携し、行政コストの削減に挑戦できるかという視点だと思っています。

――と言いますと。

 これは奈良県の特徴とも言えるのですが、平成の大合併の時に、他の道府県のように合併が進まなかった経緯があります。と言いますのも、各市町村とも、それぞれの歴史があったので、なかなか容易には合併できなかったわけです。ただ、荒井知事のリーダーシップの下、市町村合併に代わって〝奈良モデル〟と呼ばれる県とわれわれ基礎自治体が連携・協働して事業に取り組むスタイルが生まれました。従って、同構想も、〝奈良モデル〟の一つのかたちと言えるかもしれません。

とは言え、これから人口が減少し高齢化が進む中で、行政コストが右肩上がりに上昇していくのは明らかです。そういう意味では、この大和平野中央スーパーシティという新たな枠組みが生まれたのを機に、奈良県と三町が持つリソースを互いに融通し合うことなども併せて検討するなど、将来も見据えたプロジェクトにしていきたいと考えています。

――なるほど。

 2022年度から磯城郡三町で水道を広域化するのですが、これもインフラの更新という視点が含まれています。一町単独で対応するよりも三町でまとめて実施した方が合理的ですから、こうしたスキームを広げていきたいと考えています。

奈良県が田原本町で進めようとしているスマートウエルネスタウン(出典:奈良県)
奈良県が田原本町で進めようとしているスマートウエルネスタウン(出典:奈良県)