お問い合わせはこちら

俵孝太郎「一戦後人の発想」【第101回】

一国主義連合と劣国同盟ポスト武漢の世界相を考える

 識者による〝ポスト武漢〟の世界構図は、中国台頭派と没落派に大別される。筆者は30年来、共産党崩壊を展望してきたが、このウイルス騒動は習体制の大きな追加負荷となり、世界は急激に〝2リーグ〟制のブロック構造に推移する、とみる。

両極端に分かれる識者の見解

 中国・武漢ウイルス感染症の災厄は、止まる気配がない。とはいえ、正体不明の疫病のことだ。この原稿が活字になるころには、意外にも下火になっていないとも限らない。もちろん100年前の〝スペイン風邪〟のように、第2波、第3波と繰り返して数年続き、世界人口の3分の1なり半数が感染し、その数パーセントが死亡する事態に至ることもありうる。結局のところ、いつかくる終局まで結論は見えないのだが、さて筆者当面の問題は、そこまで露命がつながるか、どうかだ。人間だれしも生死不定だが、筆者のように90歳目前のトシではなおさらの話だ。この原稿に限らず数年前から、これが絶筆かも知れぬと心得て書くようにしてきた。本誌にもたまにある2回、3回の連載は、全編を書きあげて編集部に渡している。しかしそれと別問題で、終局を見届けなくてもわかることも多い。今回の武漢ウイルス騒動もその例だ。

 この騒動後の世界が、その前の世界とかなり大きく様相を変えているだろうこと。日本にとってその変容の幅が極めて大きくなるだろうこと。この2点を考えるのは、騒動発生から終局までの推移を見届けなくても十二分に可能だ。現に世界中の論者がこの問題、ことに前者に関し、見解を披瀝し始めている。

 その見方は両極端に分かれる。一方は、この疫病が第2波・第3波を呼んで長期化すると思われること。その過程でアメリカ・ヨーロッパや日本の経済力が著しく低下すると考えられること。それに対して、疫病の原発国にもかかわらず、中国が早期に発生源の武漢を完全に封鎖して局部的に感染を抑止するのに、少なくとも表向き伝えられる限りでは成功したこと。そこで他国より早く武漢を含む全土で生産活動を再開し、国際経済に占める比重を相対的に上昇させると思われること。こうした前提に立って、武漢ウイルス騒動の結果、中国はアメリカを凌いで世界の覇権を握る立場に近づく、と結論づける。

 もう一方は、この疫病が深刻な経過を辿れば辿るほど、共産中国の原発国としての責任とそれを隠蔽するための情報操作、さらに国際社会を真っ向から挑発する言動が、少なくとも米欧日などの先進自由民主主義国から強く問われること。その結果共産中国の国際的信用は大きく低下し、彼らが予期し覚悟していたレベルを大きく越える、厳しい立場に直面すること。それがもともと一党独裁の共産党の支配体制と、その極致である習体制下の硬直した陣容のもとで進行した、さまざまな内部矛盾を噴出させうること。甚だしい場合は軍を巻き込む激しい権力闘争が起きて内乱状態に陥るか、そこまでいかなくても国際的な厳しい疎外の中で孤立し急速な後退に向かうか、という状況もありうること。そうした内外の混乱を一応収拾したとしても、共産中国は先進世界から疎外され、せいぜい後進の独裁国と貧困な途上国の〝お山の大将〟的地位に甘んじざるをえなくなる、と見る。

急激に〝2リーグ〟制 ブロック構造へ移行

 日本はどちらかというと前者が多いようだが、欧米は後者がやや優勢と思われる。その中で筆者は、明らかに後者の見方に立つ。

 共産党一党独裁体制下の習近平・中国の正体を見切ったアメリカ・イギリスや日本だけでなく、いままで共産中国に対して、もちろん打算含みながら甘口の姿勢を取ることが多かったドイツ・フランスにカナダ・オーストラリアなども加えて、それぞれが安全保障では堅く結び合い、資本・経済では基本的に自己完結しつつ連合し、それでも残る弱点は互いに補い合って、中国を排除した暗黙の、しかし状況によっては顕示的な局面も見せつける、強固な結合を形成することになる、と考える。そしてこれら先進自由民主主義国家群は、かつてクリミア問題を契機にG8からプーチン・ロシアを排除しG7として集結したように、共産中国を世界の政治・経済の〝一部リーグ〟から排除し、エニワン・バット・チャイナ、中国なき世界の実現に向け、まず主力工業生産のサプライチェーンから中国企業を切り離す。さらにそれぞれの国が中国内の工場や子会社を撤収させるのを手初めに、産業・通商・国際金融の分野で中国との拘わりを極限まで薄める、と予測する。

 これに対し共産中国は、すでに債務奴隷化したカンボジア・ラオスなどの旧仏印諸国、スリランカを筆頭とするインド洋や南太平洋の小島嶼国や、反米で共鳴する中東のパキスタン・イラン、南米のベネズエラ・ボリビアなどに、アフリカのいくつかの国を加え、東欧の一角も誘い入れた、〝列国同盟〟ならぬ率直にいえば〝劣国同盟〟の形をとる〝2部リーグ〟を結成して対抗することになる。世界は、急激に〝2リーグ〟制のブロック構造に推移するが、その中でプーチン以後、文在寅以後の政治構造によるが、ロシアは韓国・インドなどと語らい〝独立リーグ〟の形をとりながら、自分だけは〝1部復帰〟を目指すことになる、と見るのだ。

30年前から見通してきた帰結

 もともと筆者は30年も前から、中国共産政権2025年崩壊説を唱えてきた。その最大の論拠は、毛沢東の〝1人っ子政策〟の当然の帰結である人口問題だ。毛の乱暴な人口調整策を半世紀も続ければ、共産中国の少子高齢化は韓国と並び、日本を凌ぐ猛スピードで進んで、高齢人口と生産年齢人口との不均衡がこのころ最大になる。高齢化した農民は耕作できなくなるし、ポスト毛の急速な工業化で都市に出稼ぎにいって低賃金・非熟練の下層労働者になったその子らは、農業技能を失って帰農不能になる。その結果農地は荒廃し、災害にも病虫害にも弱くなり、食糧生産は低下の一途を辿る。当面はチープな工業製品の輸出で得た外貨による食糧輸入で対応できても、なにぶん13億の人口だ。いずれは食糧不安と農村荒廃が同時発生し、毛沢東の持論の〝農村が都市を包囲する〟状況に陥って共産中国は大混乱する、と見たわけだ。

 筆者はこの判断を大きく変える必要を感じなかったが、こうした見方は間違いだったと見えた局面が一時はありえただろう。共産中国中央も〝1人っ子政策〟の問題点と、チープな工業製品の集中豪雨的輸出で稼ぐ外貨で食糧を輸入する方策は、後発でより低賃金のアセアン諸国などの台頭で価格競争力を失ったときは通用しなくなる、と認識していたはずだ。そこで国営企業をハイテク産業に進出させ、高度工業製品で米日欧に競争を挑むことで貿易黒字を確保する手を打った。

 この転換はそれなりに奏功し、部品・完成品の両面で彼らは世界の先端技術産業の主要プレイヤーの地歩を築き、世界最高水準の金満国家にのし上がった。だが世の中、そう思惑通りには運ばない。産業ハイテク化といっても、学術基盤も基礎技術も乏しい中国には容易なことではない。そこで彼らは、大量の留学生派遣や下請け分野の開拓、さらに国家的な知的財産の窃取で欧米や日本から不法入手した特許やノウハウを使い、急速なハイテク化を進めて一定の成果をあげたわけだ。

 だがこの手法は、ファーウェイの5G技術をめぐる一連の経過が典型の国際紛争を引き起こす。そこで国内的には、産業構造の変化で生じた余剰労働力と資金の振り向け先に、道路・鉄道などの公共投資や、新工業都市の開発を軸とする建設業を考え、国際的には〝一帯一路〟という大風呂敷を広げ、過剰な供給力と資金を使って勢力圏を地球儀の西方に伸ばし、アメリカとの覇権争いも視野に入れた動きに踏み出す、という〝思想〟を唱えた。

すぐ破綻に直面した大風呂敷

 実のところ〝一帯一路〟が本気の〝思想〟なり〝構想〟だったのか、むしろ中国国内の視線を習体制に引きつける意図に発したスローガンに過ぎなかったのか、もうひとつ分からない。むしろ後者の狙いが当初から強かったのだろうという感じもするが、それはさておき、この大風呂敷はすぐ破綻に直面する。国内的には労働集約的生産様式の時代が過ぎて、住宅群まで備えた新工業都市の建設はもはや不要だ。したがって当てずっぽうの計画を実行すれば、買い手不在の状態になるのは避けられない。地方政府や地方の軍機関が進めたこの事業は、一度も使われずゴーストタウン化し、爆破して更地化する姿が日本のテレビにさえ映るようになった。新都市に向けた高速道路や鉄道なども当然無用になるが、これらの開発・建設費はすべて地方政府が出していて、いまや中国の地方財政の累積赤字は天文学的数値に達するという。

 内需が行き詰まっているからこそ新規の外需開拓構想の〝一帯一路〟のアドバルーンをあげなければならなかった、という面もあるだろうが、その相方は、イタリアやバルカン半島の旧東欧圏の国など、EUの財政困難国が、むしろ最上客の部類で、大半は金満中国の資金援助が目当ての未開発国だ。どうせ技術力も資金力もない相手だから、壮大な夢に誘い入れていい気分にさせ、高利のカネを貸し付けて工事は中国企業が担当し、〝一帯一路〟がフル稼働して利益が上がった段階で貸金を回収するか、それが不可能でも担保の土地や公共資本を押さえ、工事で儲け、利息か担保処分で儲け、往復ビンタ式にカネを吸い上げようという、ムシのいい目論みが通るわけがない。ここでも不良債権が積み上がり、中国の経済・財政の実態は自転車操業状態、累卵の危機的水域にあったと思われる。

 日本と世界最高の座を争っている中国のアメリカ国債保有高も、世界最大の対外純資産国である日本が〝真水〟の黒字なのに対し、中国は世界中から集めた投資の利払い・返済がついて回るし、途上国中心の債権は現に焦げついているか、その目前の状態にある。世界3位という対外純資産の帳尻は実質的にマイナスで、底の抜けたバケツ的状態という。

習体制に加えた大きな追加負荷

 そうしたかりそめの〝繁栄〟の裏側の、共産中国の暗くて深い底無し沼の正体が、広く知られ始めた矢先に起きたのが、今回の武漢ウイルス騒動だったのだ。この問題が国際社会、少なくとも先進自由民主主義国の、共産中国に対する不信感を、より強いレベルで定着させたのは、疑う余地がない。それがもともと内包していた、いずれ爆発必至の構造的壊滅に向けて、限りなく大きな追加負荷を習体制に加えたことも、間違いない。

 武漢ウイルスの発生源が、海鮮市場で売られていた野獣肉を宿主とするコウモリ由来の病毒性ウイルスで、最初のヒト感染は昨年11月はじめだったとか、フランスでは武漢帰りの女性、アメリカでは武漢からの中国人旅行者から広がったという風説がある。そのころ、中国外務省の新顔タカ派報道官が公式記者会見で口走った、10月に武漢で開かれた各国軍人のスポーツ大会の際にアメリカ軍関係者が持ち込んだ、という珍説もあった。

 しかしいまは、武漢に中国科学院と軍直属と二つ存在するウイルス病毒研究施設のうちたぶん前者から、コウモリ由来病毒の研究者として国際的に知られる女性研究者が10月はじめに誤って持ち出したのが広がった、というのが定説化している。中国側は一貫して自らの責任を否定しているし、真相究明を叫ぶアメリカ・トランプ政権の中枢を口汚く罵るだけでなく、オーストラリアにはオージービーフの輸入停止まで強行した。しかしその一方で、武漢市の幹部、問題の研究施設関連の複数の〝学者〟、そして北京中央の公安幹部にも、このところ消息が途絶や、拘禁・降格情報が流れるケースが目立つ。表向きの否定の裏側で、重ね重ね隠蔽工作や事件処理を進行させる気配が、濃く漂っているのだ。

 アメリカ側はトランプ大統領以下、女性研究者説を前提としながら、故意ではなくミスだった、と繰り返している。そこに却って、生物兵器の管理上の問題だ、と匂わせている観も、しないわけではない。

賠償以外の〝打つ手〟

 故意だとしたら、これは開戦理由にもなりうる深刻な問題だが、米中が核大国になったいま、双方同時滅亡必至の戦争の選択はありえない。とすれば国と国とのかかわりを断つ決断しかないが、その議論はとりあえずさておき、過失でも原因者責任は発生する。訴訟大国・弁護士天国のアメリカは、万事につけ超高額の賠償を吹っかける裁判沙汰が、日常茶飯事だ。すでにミネソタだかミシガンだかの州当局が中国政府を相手取り損害賠償訴訟を起こした、と報じられた。他にもフロリダやテキサスの大型集団訴訟など、州や市から団体や個人まで多くの訴訟が起きている。ウソかマコトか、請求総額はすでに兆を超えて1京1000兆ドルに達した、ともいう。

 アメリカでどんな判決が出ようと中国が応ずるはずがないが、アメリカにも打つ手がないわけでもないらしい。桁は請求総額よりうんと小さいが、中国が持つ米国債がある。判決によっては、差し押さえ、利払い・売却停止に持ち込むことができないものでもない。それとは別次元で、共産中国の中枢や軍幹部などが、怪しげなカネを家族名義義か架空の名前でアメリカはじめ先進諸国に隠しているのは公然の秘密だ。賠償裁判と直接の関係はないが、アメリカ当局が知らぬはずのないこの種の情報をアングラで流すだけで、本人には致命傷だし、中国の党や政府にとっても、疑心暗鬼から生ずる内紛や粛清合戦の導火線になりうる。そのリスクを中国側がどこまで読んで対応するかも、見どころではある。

 泥仕合で、中国側が在中アメリカ官民の資産を押さえにかかることもありうる。しかしその前に、アメリカや基本的立場を同じくする諸国は、サプライチェーンからの切り離しを手初めに、在中国資産や人員の総引き揚げを進めることになる。たかが安物のネジ1本でも特殊の形で、それが嵌めるべき位置に嵌められていなければ全体が完成品として起動しない、ということなら、中国側が政治的意図で口実を設けて供給を操作したり、事故や災害・疫病で供給が一時途絶したりした場合に、大きな影響を免れない。そんなところをサプライチェーンに入れて置くリスクを、今回の事態で先進国は骨身に染みて痛感した。すでに始まった共産中国のサプライチェーンからの切り離しは、中国経済に深刻な影響をもたらす。中国側がその動きを止めようとしても、他国にサプライチェーンを設けて中国には追加投資しない、メンテナンスもしない、というだけで、止めようがなくなる。

マスクに見る古来の性癖

 共産中国に〝反省〟の二字はない。自らの非を絶対に認めない無謬性と秘密主義・隠蔽体質は、旧ソビエトやその衛星国、日本を含む西側の共産党まで、共産党一党独裁体制・共産主義者の骨絡みの基本体質だ。現中国には、そうした体制悪に加えて、エゴと欲望をあられもなく剥き出しにする、シナ商人古来の性癖が重なって存在する。修羅場になればなるほど人間も国家・民族も本性が露呈されるというが、武漢ウイルス騒動をめぐる共産中国の反応は、まさにダブル度外れなのだ。

 わかりやすいホンの一例をあげれば、マスクに絡むさまざまな話題がある。騒動の初期に日本の多くの自治体・団体から個人まで、善意で疫病の渦中にある武漢に向けて、備蓄していた医療者用のマスクや防護服などを大量に送り届けた。このとき中国の一部マスコミや民衆のSNSに、日本への感謝を示す記事や投稿も多少は出たが、疫病の大波が海を越えて日本に渡り、深刻なマスク不足が生じたとき、すでに感染のヤマ場を越していた中国側マスク生産者の、日本側の需要急増・緊急輸入要請に対する反応は、売り惜しみ・価格吊り上げ一色で、恩義に報いる感じなど、カケラも見られなかった。

 ショーバイは厳しいもんよ、といわんばかりのシナ商人伝統の流儀は、なにも日本に対してだけではなかったらしい。先進国の中でドイツとともにかねがね中国に対して目立って融和的だったフランスは、マクロン大統領の名前で5億枚のマスクの緊急輸出を要請した。しかし中国政府からは、ファーウェイの5Gを買うのなら、という交換条件つきの返答がきたという。

 しばらくの間、中国側はマスクを背に腹は変えられず高値で買う欧米にヤミで回し、長く取引を続けてきた日本は後回しにした。さんざん売り惜しんだあげくの果てに、暴利というほかない超高値で送ってきたのが超粗悪品で、さすがに中国に甘い日本のテレビでさえ、問題にしたほどだ。悪評高い〝アベノマスク〟も、調達役を受注したのは中国べったりと定評の某大手商社や、同様に中国べったりの公明党のポスターをいつも事務所に張っている社員数人の無名の会社など、4社だった。いずれも国産でなく、中国・ベトナム・カンボジアの製品を輸入したようで、どの社がどの国から調達したのかは必ずしも明らかでないが、妊婦に向けて先行配布したマスクから汚染品・不良品、さらに意図的なのか杜撰なのか、虫の死骸やゴミを同封したものがゴマンと出てきた。このため妊婦向けも配布を中断して再検品する羽目になり、全戸向けの一律2枚の配布は大幅延期になった。その後1か月たって、市中に国産、値崩れであわてて放出した中国からの輸入品が大量に出回るようになったのに、〝アベノマスク〟はまだ全世帯の1桁にも届いていないという。

 アメリカでも、税関当局が中国の24社を名指し、粗悪品を送ってきたとして、輸入禁止処分にしたそうだ。ロシアでは、武漢ウイルス感染症重篤患者のため病院で使っていた人工呼吸器が突然発火し、当の患者をはじめ数人の死者を出した。このロシア産の人工呼吸器が、まだロシアが感染拡大に見舞われる前の時点で、一歩先に患者が急増していたアメリカに対して、〝医療援助〟として贈られていて、アメリカの病院でもあわてて使用を中止したという、笑えぬ話題もあった。

 共産中国は、武漢ウイルスがそもそも自国由来であるという事実には口を拭って、〝欧米よりずっと早く完全に病害を制圧した〟と称してイタリアに医療スタッフを派遣し、アフリカ・アジアの諸国にはマスクや防護服なども送った。こういえば聞こえはいいが、前者は高級ブランド婦人服の縫い子として北イタリアに渡った、母国語しか話せない多数の出稼ぎ中国人女性のために、助っ人を派遣しただけの話らしい。後者には、他のさまざまの〝援助〟と合わせて、代金を借款に乗っけてツケ勘定にしている、という情報もある。この我利我利亡者ぶりでは、共産中国は〝劣国同盟〟の盟主の座さえ、覚束ないだろう。

重視すべきトランプの本音

 アメリカのトランプ大統領は、われわれは中国と完全に断絶しても十二分にやっていける、とツイッターで表明した。民主党べったりのアメリカ・メディアや、それを鵜呑みにするだけの日本の新聞・テレビの特派員も、この発言を〝そんなに消毒液がチャイナ・コロナに効くというなら患者に注射してみてはどうか〟というトランプ一流のブラックジョーク・ツイッターと同列視して揶揄の対象にしただけで、あっという間に〝消化〟し去ったが、筆者はこの発言はかなり重視すべき、トランプの本音だと受け取っている。

 彼が秋の大統領選挙で再選されたなら、アメリカやこの国を支持して〝一国主義連合〟に加わる先進自由民主主義国は、揃って断絶の方向に舵を切るだろう。そして世界は〝劣国同盟〟との二つのブロック構造による、反ナチ戦の同志が争ったかつての米ソ冷戦より遥かに冷たい、芯から凍てつくような、絶対零度的冷戦に移っていくだろう。

 もしトランプが敗れてバイデン民主党政権が復活したら、蒋介石夫人の宋美麗の色仕掛けに籠絡されたルーズベルトから、北京との癒着を隠そうとしなかったクリントン夫婦、就任早々妻子を北京へ遊覧と称する表敬旅行に出したオバマに至る、伝統の媚中体質に塗れた無警戒の中で、自由民主主義世界が崩壊に瀕しても筆者は驚かない。どうせトシだ。我が亡き後に、洪水よ、来たれ、だ。 

(月刊『時評』2020年7月号掲載)