2022/02/02
戦後に相次いだ自然災害の教訓からスタートした現・防災科研の役割は、近年の頻発する災害を受け、さらに高度化している。予測・予防・対応・回復という、災害に関わる全てのフェーズにおける幅広い研究活動をミッションとし、その情報はすでにさまざまな関係機関で実用化が進んでいる。国難災害の可能性もある今世紀前半、林理事長のもと防災科研の研究開発に寄せられる期待は高い。
阪神・淡路大震災の後に整備された観測網
―――防災科研は、研究所として長い歴史を有すると聞きました。沿革からご解説をいただけましたら。
林 もともとは1963年、旧・科学技術庁所管の国立試験研究機関「国立防災科学技術センター」として東京・銀座に設立されたのが出発点です。日本列島はその少し前、59年に伊勢湾台風、63年に38(サンパチ)豪雪など、相次いで自然災害に見舞われ、甚大な被害が発生しました。これら災害の教訓を受けて、総合的に防災を推進する国の研究施設が必要となり、設立に至ったものと理解しています。
その後も、新潟県長岡市に雪害実験研究所、神奈川県平塚市に波浪等観測塔など関連施設が順次設置され、下って70年には筑波研究学園都市の建設第1号施設として大型耐震実験施設も開設されました。また74年には大型降雨実験施設が開設されました。現在の同施設は、毎時15~300ミリメートルの降雨を再現できるなど、世界最大級の規模と能力を有しています。
そして2015年に国立研究開発法人として新たなスタートを切りました。
―――95年に起きた阪神・淡路大震災が一つの転換点だとお聞きしました。
林 はい、阪神・淡路大震災が発生する以前は、……(続きはログイン後)