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【末松広行・トップの決断】光吉敏郎(住友林業社長)
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【末松広行・トップの決断】光吉敏郎(住友林業社長)
森林が持つ多様な機能を活用し、国民生活向上に寄与
みつよし・としろう 昭和37年5月23日生まれ、佐賀県出身。早稲田大学教育学部卒業。60年住友林業株式会社入社、平成23年常務執行役員海外事業本部長兼海外事業部長などを歴任。令和2年4月より代表取締役社長。
ウイズ・コロナの状況下において、以前の生活様式から大きく変化したのが、生活空間としての住居に対する意識であろう。快適性と健康面、カーボンニュートラルに照らして環境に配慮した家、および建築が求められている。そのような中で温室効果ガスの吸収源としての森林、また再生可能エネルギーにおける木質バイオマス利用が改めて高まりを見せている。木を軸に多様な事業を展開する住友林業・光吉敏郎社長に、森林の持つ機能と魅力、可能性について語ってもらった。
住友林業株式会社
代表取締役社長
光吉 敏郎
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住宅販売DXへの転機に
末松
住友林業さんは一面で住宅販売、一面で林業を営むなど、海外を含め多様な事業展開で知られています。それ故に、昨年の新型コロナ感染症拡大のおりには、御社の複数の部門でそれぞれ異なる影響が生じたのではないかと推察されますが、いかがでしょうか。
光吉
まさしく、最初の緊急事態宣言が発出された4月に現職に就任したため、まずは社員とその家族、お客さま、取引先さまの健康・安全確保を最優先しつつ、財務面では資金を確保し流動性を維持することが、社長として当座の使命になりました。
まず問題となったのが、中国からのサプライチェーン途絶への対応です。キッチンのIHヒーターやトイレには中国製の資材が使われていますので、住宅のお引き渡しに混乱が発生するものと想定しておりました。結果として他からの調達によって乗り切った形となりました。これまでも例えば、建築物の構造躯体を支える金物を、中国だけでなくベトナムなど他の国にも拠点を設けてはいたのですが、結局は金物の原料となる鉄はすべて中国で生産されていましたので、上流部分で潜在的な寸断のリスクを内包していたことになります。そういう意味では今回、産業界が〝チャイナ+1〟の方向へ見直す機運が高まったのではないかと思います。
末松
緊急事態宣言期間中は、テレワークに注目が集まりました。社内ではテレワークに移行されたのでしょうか?
光吉
移行を進めましたが一部のインフラ整備が追い付かず、スムーズな導入とはなりませんでした。特に設計のような技術系の仕事は、ハード面で高い性能が求められるためテレワークが困難でした。また、お客さまとの対面での打ち合わせもストップしましたので、計画通りの受注、着工が出来ませんでした。
末松
そうなると、対面を基本とする業務にも影響したのではないでしょうか?
光吉
はい、特にリフォーム部門は大変でした。比較的年配のお客さまがご自宅に住まいながらリフォームの相談を進める場合が非常に多いため、社員、職人の訪問をお断りされるケースが相次ぎ、新築部門より落ち込みました。また、新築部門でもお客さまが住宅展示場を訪れて相談するという従来型の住宅営業の手法が成り立たず、弊社も5月は展示場の来場者数が前年比8割ダウンするなど、本当に先行きが危ぶまれる状況となりました。
しかし、それは同時にウェブを通じたデジタルマーケティングへと急速な転換を図る契機になったように思います。弊社は急きょIT投資を行い、新築のお客さま向けにオンライン上にて様々なコンテンツで弊社の家づくりを体感できる「MYHOME PARK」を開催しました。設計相談会を実施したほか、専門家や著名人に住宅の特性について説明していただくなど、DXによる集客に注力しました。また間取りの提案に関しては、玄関を入ってすぐに洗面所がありそこでうがい手洗いができる〝ただいま手洗い〟の提案を強化したり、テレワーク用のスペースを設けるなど、コロナ対応型とも言うべき新たな住宅を提供するように切り替えました。
末松
非常に柔軟かつ迅速な対応ですね。その結果はいかがでしたか。
光吉
はい、7月以降は成果が顕著に表れ、受注においては前年同月比プラスを記録しました。
末松
光吉社長も出張等の行動がしばらく制約されたのでは。
光吉
その分社内で今後のCO2削減に向けてどう在るべきか等、この機にじっくり議論する時間が、逆に得られたと思います。
(聞き手)末松広行
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