日本の安全保障体制は、今や陸・海・空の域を超えて宇宙やサイバー空間まで及び、新たな防衛体制の構築が求められている。今回、世界の最新トレンドをもとに、各分野においてどのような防衛戦略が構想されているのか、松本戦略企画課長にその動向と方向性について解説してもらった。
(この原稿は、2020年2月18日に虎ノ門政策研究会で行われた講演内容をベースにしております。)
米中二極化が進むグローバルトレンド
まず現在のグローバルトレンドについてお話しておきたいと思います。国際的な防衛政策上のトレンド変化が非常に早く、常に対応していくためには、将来的なトレンド予測が重要になります。10年先のトレンドを読むのは非常に難しいことですが、少なくともおおよその方向性を定めておかないと、研究開発に要した投資が将来的に役に立たなくなる可能性もあります。従って、今後のトレンドを読むためにも現在の状況を認識しておく必要があります。
世界各国における国別国防費は、2018年段階で米国が全国防費の36%を占めてトップ、同14%の2位中国以下、8カ国(中国、ロシア、フランス、イギリス、サウジアラビア、インド、日本)のほぼ合計と同じ額に達します。ただ、中国も2009年から18年までの10年間で83%増加させており、1位米国と2位中国で世界の国防費の半分を占めています。付言すると、これは公表ベースですので、その他の防衛関連コストが含まれておらず実態はもっと多いのではないかと指摘されています。さらにサウジアラビアも伸び率が大きく、17年には世界第3位に拡大、しかも対GDP比では2位ロシアの3・93%を大きく凌駕する8・77%で突出しています。対して日本は0・92%で前記8カ国の中で唯一1%を下回っています。
また研究開発費も米国が1位をキープし続けていますが、近年中国が米国に迫る勢いで第2位に位置付けています。日本は年ごとに増減を繰り返しながら、2位に大きく離されつつも3位を保っています。GDP比では韓国の伸びが著しく、09年に日本を抜いて以後1位を維持しています。ただ、研究開発費の政府負担率は各国全体的に減少傾向にあり、特に日本の政府負担率は主要国の中でも低い割合で推移しています。サイエンス・エンジニアリングの論文発表なども新興国の台頭が目覚ましく、中国は16年に実績で初めて米国を追い抜き、インドも順位を大きく上げています。相対的に日本の論文発表数は主要国の中でも減少傾向にあり、16年段階では世界6位に転落しました。特許についても同様の状況で、今や出願件数の増加率1位は中国で、日本は3位ながら出願数自体は全体として減少しています。
以上のように総じてグローバルトレンドは、国際秩序の変容が進行していると言えるでしょう。国際社会における日本の存在感は低下し、米中二極化構造がより鮮明になっています。米軍の軍事・科学技術における従来の圧倒的優位性に陰りが見え、米中間の軍事・技術覇権をめぐる争いは長期化の様相を呈するようになりました。そこへ新たな民生技術革新が導入されれば、社会システムのみならず将来戦闘の様相を一変させる可能性もある、と言っても過言ではありません。
「領域横断作戦」の重要性
では、将来戦闘のトレンドはどのようなものになるのか。スピード……(続きはログイン後)