2023/07/06
交通事故の減少や地域公共交通の活性化、国際競争力の強化などの課題解決に大きな効果を発揮するものとして、自動運転技術の開発と制度整備が進められ、大きな期待を集めている。
2020年には、高速道路での条件付き自動運転や、限定地域での無人自動運転移動サービスの実現、自動ブレーキの新車搭載率を9割以上とすることなどの政府目標が掲げられ、普及・啓発活動が官民で推進されている。より安全・安心な交通を実現することを目指す一方、日本の技術や安全基準が国際標準となるよう、国際的な議論にも挑んでいる。
技術開発や制度整備の現状、社会にもたらされる変化など、急速に進展している最中にある自動運転技術政策について、国土交通省自動運転戦略室長の平澤崇裕氏に聞いた。
――自動運転の定義では「レベル2」に分類される、高速道路におけるハンドルの自動操作などが既に実用化され、自動運転技術が着々と普及しています。現在の研究開発の進捗状況を教えてください。
平澤 昨年6月にIT総合戦略本部で決定された「官民ITS構想・ロードマップ2019」では、2020年目途でレベル3に相当する高速道路での自動運転、レベル4に相当する限定地域での無人自動運転移動サービスの実現などが目標に掲げられています。国内の自動車メーカー各社がこの目標に向かって技術開発を進めている状況ですが、目標達成が間近になっているのが衝突被害軽減ブレーキです。20年中に新車乗用車の90%に搭載することが目標となっていますが、18年末時点で、搭載率は84・6%に達しています。
――自動運転の意義として、安全安心の社会の実現ということを考えれば、衝突被害軽減ブレーキの開発と定着は必要不可欠と言えそうですね。
平澤 その通りです。昨今の痛ましい事故への緊急対策として、新車乗用車に対する衝突被害軽減ブレーキの搭載の義務化も決定したところです。警察庁の18年データによると、交通事故により3694人の死者が出ていますが、そのうち約96パーセントが運転者の違反、ヒューマンエラーに起因するものです。自動運転が実用化することによって、こうしたヒューマンエラーによる交通事故が大幅に減少することが期待されています。
――16年12月に国土交通大臣を本部長とする自動運転戦略本部が立ち上げられ、直近では昨年11月に第6回会合が開催されていますが、具体的な進捗状況について教えてください。
平澤 自動運転戦略本部では……(続きはログイン後)