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2025大阪・関西万博の成功に向けて

「未来社会の実験場」を体現するために

(資料提供:経済産業省)
(資料提供:経済産業省)

 大阪・関西万博ではこれら従来型のパビリオン展示に加え、未来社会ショーケース事業や「TEAM EXPO 2025」プログラムなど、今までにない要素を追加し、新しい万博の開催を目指していきます。未来社会ショーケース事業は、冒頭のコンセプトの一つ「未来社会の実験場」を体現するもので、2020年代後半の社会実装を目指していた〝未来〟を感じさせる次世代技術や、社会システムの数々を万博の場で実証します。この試みが会期後のレガシーにつながっていくものと想定しています。

 現在のところ「スマートモビリティ万博」「デジタル万博」「バーチャル万博」「アート万博」「グリーン万博」「フューチャーライフ万博」の6分野を想定し、例えば空飛ぶクルマやアンモニア発電、6G、多言語自動翻訳システムなど多彩なコンテンツの企画を練っているところです。

 「TEAM EXPO 2025」プログラムは、さらに多くの特色を有しています。半年間にわたる開催期間において、万博会場内部でイベントを打つのみにとどまらず、会期前と後を含め、夢洲の会場外でも、自発的に誰もが万博に参加できる新たなプログラムを打ち出します。本年5月末時点で、自らが描く未来の実現に向けた一つ一つのアクションにチャレンジしたいという「共創チャレンジ」が512件、複数の「共創チャレンジ」の創出・支援をする法人・団体による「共創パートナー」が179件登録されています。「共創チャレンジ」登録者に対し、「共創パートナー」登録者が、資金や場、ノウハウ等を提供し、協会がこれをマッチングするという形で現在進めているところです。

アップデートを続けるアクションプラン

 2025年の開催に向け、現在われわれが力を入れていることが3点あります。

 まず、各国への参加招請活動の推進です。20年12月1日の登録申請承認後、150カ国25国際機関の出展を目標に、わが国の在外公館経由で参加招請状を発出し、現地政府等へ働きかけを行っています。05年の愛知万博の時は120カ国でした。現時点で、参加の目途が立った国の数は目標の9割を超える概ね140カ国に達しているなど、招聘活動は順調に進んでおります。

 次いで、具体化に向けた検討を進めていかねばなりません。冒頭で申し上げた「People's Living Lab( 未来社会の実験場)」の具体化を目指すため、日本の最新技術や新しい価値観、新しい社会を世界に示す絶好の機会と捉え、取り組みを推進します。

 こうした地元からの要望を踏まえ具体化へのベースとなるのが、関係省庁の取り組みなどをまとめ策定されたアクションプランです。同プランは昨年12月の策定以後、事業の進捗や関係各位からの新たな提案を踏まえ約半年ごとに改訂し、常に内容をアップデートしていきます。①モビリティ、②エネルギー・環境、③デジタル、④健康・医療、⑤観光・食・文化、⑥科学技術・テーマプロジェクト等、の各分野別に整理され、改訂の度に施策が追加される分野もあります。

 例えばモビリティに関しては、空飛ぶクルマについては、技術面はもちろん、上空をクルマが飛び交う社会を国民がどう感じるのか、社会受容性を計る上でも来場された方に未来を体感してもらうことが必要だと考えています。またエネルギーに関しては2030年度目標として設定している水素発電技術やアンモニア発電技術を2025年段階で実証します。デジタルでは、デジタルツインを活用した次世代エンタメ・サービスを、健康・医療(ライフサイエンス)ではパーソナルヘルスレコード(PHR)を利用した万博体験、観光・食・文化では未来社会・フューチャーライフに向けた被災地の復興や食文化の情報発信、科学技術・テーマプロジェクト等については、ロボットフレンドリーな環境の実現や、女性活躍推進館(仮称)出展、という具合に各分野とも複数の施策を設け、霞が関関係省庁を巻き込みつつ、精力的に準備を進めているところです。

オールジャパンで機運醸成を

(資料提供:経済産業省)
(資料提供:経済産業省)

 具体化に向けた検討においては、インフラ整備計画も不可欠です。万博会場そのものへのアクセスはもちろん、大阪臨海部全体の開発を視野に入れる必要があります。また、大阪の新たな成長という意味では、観光振興やにぎわいの創出も欠かせません。と同時に人が集積するイベントでどのような防災対策を講じていくべきか、こうしたさまざまな視点を包括しながら進めるべく、昨年8月にインフラ整備計画をつくりました。

 また万博の会期中、数週間ごとにテーマを設定し、各テーマに沿ったイベントやフォーラム等を万博会場内外で開催する「テーマWee k」を検討しています。先般開催したドバイ万博でも、会期中に10の重要課題を取り上げる「テーマWeek」が設定されていました。今世紀に入って以後、外国からの参加の場合いわゆる先進国では官民協調してパビリオンを出展するケースがスタンダードとなり、万博は言わば一つのビジネスマッチングの場という性格を帯びつつあります。ドバイ万博でもビジネスショーの様相が色濃い部分がありました。であれば大阪・関西万博においても会場外も含めて複数のテーマを設け、今後のビジネスにつなげていくためにも大がかりなビジネスイベントの実施を考えているところです。

 そして3番目が、全国的な機運の醸成です。オリンピック・パラリンピックは都市単位で開催しますが、万博は国が主体となりますので、開催地は大阪・関西ではあるものの、成功のためには日本全国での機運醸成を進めることが重要です。今春には応募総数数万件の中から公式キャラクターが決まり、7月には愛称〝ミャクミャク〟が決定しました。ミャクミャクは角度によって縦横に造形が変化する可変型のキャラ設定となっています。

 また、大阪・関西万博特別仕様のデザインを施した自動車のナンバープレートを2025年まで期間限定で全国の希望者に公布していきます。寄付金有り・無しの2パターンを用意し、本年9月下旬より事前申し込み受付を開始し、10月下旬に交付開始を予定しています。これも機運醸成に大いに役立つものと期待しています。

 機運醸成に向けては自治体の協力、それも大阪・関西エリアだけでなくオールジャパンでの取り組みが求められるところです。現在、「2025年日本国際博覧会とともに、地域の未来を創造する首長連合」(万博首長連合)が結成され、現時点では、600を超える自治体が加入しています。万博や地方創生についての情報発信などを通じ、全国の自治体と企業との連携を促進し、新規ビジネスの創出や地域文化の発信、未来づくりを支援する活動を展開しています。また、「みらい協創ワークショップ・セミナー」を催し、共有の課題や思いをもった自治体同士、面的な連携を推進します。

 いずれにしても開催まで残り2年半となりましたが、まだ全国的には実感がわかない面もあろうと思いますので、このように各種準備を進めつつ、成功に向け機運醸成にも力を入れておりますので、自治体、産業界、アカデミア、各種団体等、多方面のご協力をいただきたいと思います。全国どこにでもご説明にお伺いしますので、ぜひお声がけをお待ちしています。
                                                 (月刊『時評』2022年9月号掲載)