2023/05/04
わが国の超高齢化が進む現在、現役期間をより延伸し支える側の人口を増やしていくためには、国民全体の健康増進を図りヘルスケア産業の活性化を図る必要がある。経済産業省では健康経営、エビデンスづくり、PHRの活用に取り組み、健康寿命の延伸と新たな産業分野成長の両立を図ろうとしている。その最新動向を稲邑課長に語ってもらい、スタンフォード大学循環器科主任研究員池野文昭氏にもポイントを解説してもらった。 (聞き手:田中博英、中村幸之進)
Tweet健康長寿化による支え手の増加
まず、政府全体がヘルスケアに取り組む背景からご説明したいと思います。周知の通り、わが国は少子化・超高齢志化社会の一途をたどっており、日本の総人口は今後100年で現在段階からちょうど100年前の、明治時代後半の水準に戻っていくと推計されます。この変化は1000年単位の超ロングスパンで捉えても、極めて急激な減少です。仮に、現在「高齢者」と定義されている65歳で仕事の第一線からリタイアした場合、18~64歳のいわゆる生産年齢で一人の高齢者を支える比率は、2017年段階の2・1人から40年に1・5人へと減少し生産年齢が高齢者を支える構図はますます困難となっていきます。
しかし、支えられる年齢を75歳からに変わったとしたらどうなるでしょう。18~74歳までの世代で1人の高齢者を支える比率は、2017年で5・1人、40年時点でもまだ3・3人となります。現時点で65歳の高齢者を支える比率を将来においても上回り、支える側に一定の余力が生じることがお分かりいただけると思います。であれば、70代半ばまで働く世代としてご活躍いただき、支える側として頑張っていただければ、高齢者を支える構図もより持続的な形で変化していくと思われます。
そのためにも健康を維持して長く働けることが重要な意味を持つわけで、国がヘルスケアの推進を図るのもこうした背景によるものです。実際にここ20年ほどは、高齢者の体力に若返りの傾向が続いており、健康寿命も国際平均の68歳に比べ日本は75歳で世界第2位です。それゆえ世界1位である平均寿命84歳と健康寿命との差をより一層縮めていく、これが政策上の大きな課題となっています。この傾向が続けば、より多くの方が75歳まで社会の第一線で働くことが可能になるのではと期待しています。
こうした背景のもとヘルスケアを進める体制として……(続きはログイン後)