お問い合わせはこちら

【内閣府/特区政策最前線】三浦 聡氏

競争力強化に向けた国家戦略特区の活用  ―成長に不可欠な規制改革の方向性とは―

内閣府地方創生推進事務局審議官(国家戦略特区担当)三浦 聡氏
内閣府地方創生推進事務局審議官(国家戦略特区担当)三浦 聡氏

 規制改革と言えば“規制緩和”を想起される向きも多いと思われるが、これからの規制改革は「制度の現代化」であると三浦氏は指摘する。その方向性を体現する重要なツールとなるのが国家戦略特区と構造改革特区である。デジタル化の進展とともに、より一層、住民生活の向上、産業競争力の強化そして地域経済活性化に資する特区の活用について最新動向を語ってもらった。

特区制度のあらまし

 私は現在、内閣府で国家戦略特区と構造改革特区制度の仕事を担当しております。この特区制度は、地方経済の活性化と、日本の国全体を見て構造改革や規制改革を進めて産業競争力を強化する、という二つのミッションを背負っています。

 現在、構造改革特区、総合特区、国家戦略特区と3種類の制度があります。

 まず構造改革特区は、地域を限定して規制の特例を設ける制度で、全国どの自治体でも、手を挙げて、この制度を使っていただけます。そしてその地域で特区による規制改革をしばらく実施したあとで、弊害が生じたかどうかを検証し、もし弊害が生じていないのなら、特区限定の規制の特例を全国的な規制改革へ拡大していく、という仕組みです。

 構造改革特区が誕生したのは2002(平成14)年でしたが、その後、規制改革のみならず財政面を含め地域の取り組みを総合的に支援する総合特区が11(同23)年に、さらに、国があらかじめ地域を指定した上で規制の特例措置等を講じる国家戦略特区制度ができたのが13(同25)年12月です。国家戦略特区では、文字通り国家が戦略的見地に立って地域を指定して特区とする仕組みとなっており、21年末現在、全国で10区域が対象となっています。

 国家戦略特区制度は、自治体や事業者等からまず提案を受け、民間有識者等によるWG(ワーキンググループ)による調査・検討と、特区諮問会議の審議を経て、規制省庁と調整し、特例措置が実現する運びとなります。もちろん現行の規制は何らかの必要性をもって制度化されたわけであり、それを改める、緩めるというのはそれなりに思い切った判断となり得ますので、この特例措置実現までが最も労を要する部分となります。

 その後、実現した特例措置の下での具体的な事業実施に向けては、事業者の公募、具体的な区域計画案の作成、そして特区諮問会議の審議を経たあと総理大臣認定に至ります。  そして前述の通り、弊害がないことが明らかになり、その後全国展開へ発展すれば、その規制改革については一通り特区の役割を終えたと言えるでしょう。

(資料:内閣府)
(資料:内閣府)

 これまで、国家戦略特区制度でいくつもの規制改革を行い、多様な分野で具体的成果が挙がっています。例えば観光分野で古民家への旅館業法の適用除外を図ったところ19年度に約1億2100万円の市場を創出し、都市公園内保育所設置を解禁したことで該当エリアの待機児童約3割の解消に貢献、さらに農家レストランの農地内設置特例により12カ所で開設し農業の6次産業化や雇用の創出に貢献しました。これらのプロジェクトは実証の結果、問題が認められなかったことから、いずれも全国措置化につながっています。

スーパーシティ区域指定に向けて

 以上が枠組みの説明となりますが、次に、特区の目下の重点課題について申し上げたいと思います。

 まず、われわれの部局で最も力を入れているのが、スーパーシティ構想です。住民が参画し、住民目線で2030年ごろの未来社会を先行実現することを目指しています。そのポイントは……(続きはログイン後)

全文は、研究会員になることで読むことができます。

ログインはこちらから