2024/09/26
有村 参議院議員の有村治子です。今回、「時評」の企画によって、経済産業省の蓮井審議官と積極的な人材戦略を展開されている富士通株式会社の平松執行役員(CHRO)と、本来、日本の貴重な人材であるべき博士人材をどのように日本の活力に生かしていくのか、鼎談(ていだん)する機会が実現しました。私が今年春に行った国会質問での問題提起が、大学関係者や研究職、公務員人事関係者や省庁をまたいだ霞が関で静かに話題となっているようです(笑)。
私が質問したのは、「世界各国が〝知の高度化〟を進め、明確な国家的意図を持って自国の科学技術を加速させている中、わが国においてはなぜ博士号取得者が、活躍できていないのか? 残念ながら日本においては学術界以外で博士号に敬意を向ける土壌が乏しく、そもそも日本には博士人材が持つ知力を、いかに日本の未来に活用するかという国家戦略がない。科学技術立国日本は本当に大丈夫か」という内容でした。
私は、日本の未来を慈しむがゆえに、わが国科学技術力の現状にただならぬ危機感を抱いており、この分野に社会の関心を向けたいと動いています。米、英、独、仏、日、中、韓において、人口100万人当たりの博士号取得者の数を比較すると、この20年間で残りの6か国は、皆博士号取得者を増加させているにもかかわらず、日本だけが明らかに下降傾向にあります。国ごとの博士号取得者数(絶対数)を見ても、米国と中国が博士号取得者をこの20年間で倍増させ世界ツートップの勢いを見せ、独、英、仏、韓も取得者数を増加させているのに、日本だけが博士号取得者を減らしています。年を経るほどに、他国は博士号取得者を増加させる一方、日本だけが「知のリーダー」を減らしています。
近年、世界的に引用され影響力のある論文数が減り、わが国研究力の凋落が激しいと指摘されますが、これは単に論文数だけの問題ではなく、そもそも博士課程に在籍する大学院生数がこの15年間で半減したという現状を鑑みても、日本においては博士号取得者が、他の先進国ほど敬意を持たれる対象になっていません。
蓮井 有村議員が指摘された〝知の高度化〟が世界的に起きているというのは、まさにその通りで、例えば、アメリカの企業の経営者は、今や3分の2以上、7割近くが大学院卒で占められていると言われています。残念ながら日本の場合、大学院卒は15%以下にすぎません。すなわち、85%近くが大学卒で、取得は学士にとどまっています。最近は「低学歴国家日本」と指摘される状況に陥っています。
有村 「低学歴国家日本」とは、随分手厳しい表現ですね。ショックですが、私たちは今こそ、この現実を直視すべきです。
わが国で長年言われてきた「学歴社会」は、実は高校卒業時点すなわち大学などへの進学時点での偏差値という一時期の数値に偏りすぎているからではないでしょうか。18歳前後の偏差値が高いか低いかによって進学先が事実上決まり、そのランキングに沿って、生涯賃金のパターンが分類化されていく。戦後も一貫して続いた学歴社会が、18歳前後の限られた定点における「物差し」だけで評価されるのであれば、大学院修士号や博士号を評価する土壌は生まれてきません……。