所信表明における三つのポイント
森信 川本さんに対しては、民間での豊富な経験を積まれた新総裁として社会からの注目度が大きいと思います。国家公務員を長く務めた私自身、川本さんのような方が人事院総裁になっていただくことに大きな期待を寄せているところです。まずは改めて、人事院の主な役割についてご解説をお願いします。
川本 人事院の役割は「人事行政の公正の確保」、「労働基本権制約の代償機能」、「人事行政の専門機関」に集約されると思います。
これらについてより具体的に申しますと、まず公務員人事管理の公正性が確保されるよう、採用試験、任免の基準の設定などを行っています。
また労働基本権制約の代償措置として、給与等の勤務条件の改定等を国会・内閣に勧告しています。国家公務員は労働基本権が制約されており、その給与は社会一般の情勢に適応することが法律により求められているため、公務員給与と民間給与の水準を均衡させること、すなわち民間準拠を基本に給与勧告を実施しています。今年に関しては、月例給は改定なし、ボーナスは0・15月分引き下げの勧告を国会および内閣に行いました。そしてこの勧告と併せ、われわれ人事院が取り組んでいく方針を示した「公務員人事管理に関する報告」を提出しました。
さらに、人事行政の専門機関として、社会一般の情勢に的確に対応した施策を推進、各種報告を行っています。
森信 新総裁として、今回の「報告」作成ではどのような問題意識で臨まれましたか。
川本 課題の認識をはっきりさせること、そして課題に対する解決の方向性を示すことです。6月23日に人事院総裁に就任した時点ですでに「報告」の草案づくりが始まっていましたので、まずはこれらの方向性を反映させるよう職員の皆さんにお願いしました。その背景には、人事官候補としての国会での所信表明の際に申し上げた三つのポイントがあります。
森信 どのような点でしょうか。
川本 一つは行政組織における経営管理力、マネジメント力の強化です。次いで時代環境に適応できる能力の確保です。これは公務と民間との間の人材の流動性を高めることも含んでいます。最後が国際性と開放性の観点です。これら3点は、私が過去に、国家公安委員会委員として警察行政の監督・管理に携わり、またそれ以前から各府省の審議会等で議論に参加させいただいていたころから抱いていた問題意識です。所信表明の場でお伝えしたこれらのポイントを、人事院総裁就任後の「報告」づくりで実践した、ということです。
「国会等の一層の理解と協力を切願」
森信 先ほどから話題になっている「報告」はこの8月に発表されましたが、例年よりかなり踏み込んだ内容であるとしてマスコミにも大きく取り上げられました。
川本 今回の「報告」と同じような内容は例年も記してはいたのですが、今回はいわば文章の「輪郭」をより明確化させたと言えるかもしれません。過去の「報告」や今回の草案を見た際に、「輪郭」がやや曖昧だったように思われたため、前述の課題の認識と解決、という観点をもとに明確になるよう心掛けました。私自身、これまでの仕事において、課題の認識、ファクト・ファインディング、分析などの点に重きを置いてきましたので、そうした経験をもとに、今回の「報告」においてもエビデンスベースを大事にして作成に臨んだつもりです。
森信 ご指摘の課題の認識につきまして、今回の「報告」では公務員人事管理における課題と、その対応に向けた方向性が示されていますね。
川本 はい。「報告」の内容については、「総裁談話」でも言及しています。
森信 「報告」や「総裁談話」について、ポイントをご解説いただけましたら。
川本 まず人材面での課題としては、(……続きはログイン後)