今般の新型コロナウイルス問題に絡む特定定額給付金支給において、マイナンバーと口座のひも付け問題がクローズアップされた。これは個人情報の取り扱いをどう考えるかという根本的なテーマでもある。ほぼ時を同じくして、改正・個人情報保護法が成立した。消費者の権利拡充、不適正利用の禁止の明文化、「仮名加工情報」の導入など、改正法のポイントを其田真理・個人情報保護委員会事務局長に詳細に解説してもらった。
Tweet新たに「仮名加工情報」を導入
森信 6月5日、改正個人情報保護法が国会で可決・成立しました。今回の改正のポイントについて解説をお願いします。
其田 2003年に成立した個人情報保護法は、2015年に成立した前回の改正法により3年ごとの見直しが義務付けられており、とりわけ今回は2016年の個人情報保護委員会発足後、初めての見直しになります。前回の見直しから今回までの数年間を振り返ると、やはり情報通信技術が劇的に進歩していること、それに呼応する面も含めて自分の情報に対する個人の意識が年々高まりを見せていること、そして国際化が進んだこと、この3点が法律を取り巻く背景にあると言えるでしょう。
それらの点を踏まえ、今回の改正においてポイントの一つとなったのは、個人の権利の在り方です。端的に言えば、事業者が保有する個人データに対して開示請求権、利用停止権、消去権など、消費者の権利行使の拡充を求める声があり、これを受けて利用停止権、消去権が大きく拡充されました。
一方でいろいろな諸情勢を踏まえ、事業者の守るべき責務について、違法または不当な行為を助長するような不適正な利用をしてはならない、という条文を新たに追加しました。これまで、情報の不適正取得については個人情報保護法上でも禁止されていたのですが、今回は利用する場合も、不適正な利用はやめてください、と明確化したのが大きな改正点です。というのも、過去に委員会が扱った事案の中で、たとえ個人情報保護法の範囲内であっても、あまりにも個人の権利保護に照らしていかがかと思われる事案が若干あったものですから、こうした不適正利用は困ります、という内容を法的に明記したという次第です。
森信 データの活用に関する施策についてはどうでしょう。