いよいよ今年は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される。東日本大震災からの復興、インバウンド増に向けた地方の魅力など、国際社会に向けた多角的な発信の好機である、と衆議院議員・林幹雄氏は指摘する。近年相次ぐ自然災害を乗り越え、日本が世界に向け活力ある姿をアピールすることは、すなわち日本経済の活性化に他ならない、と。そのためには政治の安定、シンクタンクたる官僚の活用も不可欠だと言う。/聞き手・米盛康正(本誌主幹)
災害対策に必要な、〝人間の心の備え〟
―――昨年2019年を振り返ると、やはり先生の地元の千葉県をはじめ、台風・豪雨災害の印象が強く残っています。この点、内閣府の特命担当大臣(防災)を務められたご経験を鑑み、今後の在るべき対応についてご意見をうかがえればと思います。
林 台風15号、19号をはじめとして日本各地が多くの自然災害に見舞われ、甚大な被害が発生しました。まずはお亡くなりになった方々のご冥福をお祈りすると同時に、被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げたいと思います。
昨年は平成から令和へ移行したわけですが、振り返ると平成は一貫して戦争の無い平和な時代であった一方、自然災害との闘いの時代でもあったように思います。1995(平成7)年1月に発生した阪神・淡路大震災、2011(平成23)年3月の東日本大震災などの大規模自然災害で多くの尊い命が失われました。かつては、〝災害は忘れた頃にやってくる〟などと言われたものですが、近年は災害の爪痕を打ち消す間もなく次の災害が頻発するという状況です。そして専門家が指摘するところでは、地球温暖化・気候変動によって海水温が上昇し、今後はさらに大型の台風や集中豪雨が起きる可能性があると言われています。
当然、それら自然災害には相応の備えをしなければなりません。そしてその備えはインフラなどのハード面だけではなく、人間の心の備えもまた必要です。
―――物心両面での備えが求められるということですね。
林 はい。例えば台風15号では、千葉県をはじめ関東各地で2000本の電柱が破損・倒壊し、最大約93万戸が長時間にわたり停電を余儀なくされました。停電もこれまでは1~2日程度で復旧するのが通常でしたが、今回はそれが1週間や10日。しかも電気だけでなく水道にまで影響が及ぶなど、日常生活に深刻な支障をきたす大変な事態に発展したわけです。また15号が風台風なら19号は雨台風でした。これにより70を超える河川で決壊や氾濫が起こったのですが、「まさか堤防が決壊するとは思わなかった」という被害住民の声が少なからず寄せられました。やはりインフラに加え心の備えが必要だということが改めて認識されたと言えるでしょう。
―――防災に関するキーワードとして、「国土強靱化」が定着した感があります。
林 「国土強靱化」は、自民党が野党であった2011年10月に、当時、党幹事長代理を務めておられた二階俊博・(現)幹事長のリーダーシップのもとスタートし、今日も推進しているわけです。現在、自然災害が発生するたび、改めて「国土強靱化」があって本当によかった、そしてさらなる推進がいかに大事か、つくづく実感するところです。この「国土強靱化」構想は日本だけでなく世界各地で自然災害の犠牲になった方々の経験を糧に成り立っており、現在は2020年度を目途に3カ年で防災・減災・国土強靭化を進める、総事業費7兆円規模の緊急対策を実施しています。しかし昨年の台風被害等を鑑み、3カ年で終わらせることなくさらに継続して推進する必要があると感じています。
―――世界的に気候が大きく変動する中、こうした日本の災害対策ノウハウを、いずれは各国のモデルケースとする日も来るのでは。
林 そうですね……(続きはログイン後)