2024/08/01
『読めば差がつく! 若手公務員による研修の実現』、『公務員のためのハラスメント防止策』(ともにぎょうせい)など、公務員を対象にしたマネジメント書籍を精力的に刊行してきた高嶋直人氏。人事院の研修指導課長や公務員研修所の教授として多くの公務人材を育成してきた高嶋氏の、退職後初の単行本となる。
あとがき冒頭で著者が触れているように、マネジメントには「仕事のマネジメントと人材のマネジメント」の2種類があり、どちらをおろそかにしても成果は出ない。中でも人材マネジメントは、組織の基盤であり必要条件。その本質は職員を「活かし育てる」ことだと高嶋氏は記す。
人材マネジメントは組織や人によって最適解が異なるのはもちろんだが、民間と公務組織では前提条件が大きく異なる。公務員の人材マネジメントも「真に公務員向け」である必要があると高嶋氏は言う。第1章「新人を育てる20の手法」の一項に、公務は「消費者を選べない」「サービスの提供を休止する自由がない」などの特殊性が挙げられているが、上司・先輩の大事な仕事は、部下・新人により高い倫理観とそれに基づいた行動規範を持たせ、公務を担う者としての使命感を教えていくことだと高嶋氏は書く。
第2章「部下を伸ばす50の方法」では、「成長の機会を与える」「教えすぎない」「計画を立て継続的に育てる」「責任は自分がとる」「本気で期待し言葉で伝える」「細かく干渉しない」など、見出しだけを見ると、民間企業でも通用するマネジメント手法のように見える。しかし詳細を読んでいくと、例えば、民間企業とは違って、「チームで仕事を行い、今でも年功的な要素を色濃く残した人事の運用が現実」「日本組織の中でも特に公務組織は、採用方法等により同質性の高い人材で構成」など、公務員組織である前提で書かれていて、筆者の経験および筆者の見聞した膨大な事例から導き出された、理論に裏付けされた実践的(公務員)人材マネジメントであることが分かる。
高嶋氏は現在も公務員研修をライフワークとして、公務員研修所や全国の自治体で研修を行っている。組織の中での個人の行動など、深い理解に基づいた上で行われる高嶋氏の〝講義〟を凝縮した1冊。