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【時事評論】「新たな日常」の実現は官民の連携で

実施100年、改めて国勢調査に協力を

pixabayより
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 7月17日、〝骨太の方針〟こと、「経済財政運営と改革の基本方針2020」(以下「方針」)が閣議決定された。当然のことながら、今冬以来の新型コロナウイルス感染症拡大によって、過去の方針とは基本的な観点が大きく異なる。安倍晋三総理も7月8日の経済財政諮問会議の後、「世界的な時代の転換点にあって、この数年間で思い切った社会変革を実行していくか否かが、わが国の未来を左右するとの切迫した危機感に基づいた原案となっている。新たな日常の確立を通じた質の高い経済社会の実現を目指す」と述べている通り、経済・社会の新しい姿はポスト・コロナの前提のもと確立・運営されるとの認識が示された。終結の道筋が依然見えない現在、この「方針」に対しては否も応もなく、政官に一任することなく国民全体を挙げて実現を図るべきだ。

 新型コロナ感染症拡大時には、日本社会における想定外、認知外の脆弱性がいくつか露呈された。海外依存度の高さ故に停滞したサプライチェーンや、行政サービスのデジタル化の遅れなどがその例だ。「方針」ではこれら弱点の克服を図るため見直しの方向性を打ち出している。これまで構築してきた大規模自然災害発生時などとは異なる、新たな危機管理体制が求められているのだ。

 そして、余儀なくされた自粛期間によって落ち込んだ経済をどう立て直し、持続的な回復をどう図るかが最も重要である。しかも「方針」でも示しているように、感染症拡大防止との両立を図りながら、というのは極めて重い命題だ。収益が大きく落ち込んだ飲食やイベント、旅行業などの各種サービス業に対して早期回復の道筋をつけると同時に、新たな「就職氷河期世代」のように、将来的に影響を及ぼす恐れのある事案を今のうちに抑制しておくことが急務となる。

 その上で、「方針」では〝デジタルニューディール〟をはじめ、「新たな日常」において経済成長を牽引するテーマを掲げている。その実現に向けては、言うまでもなく官民の密接な連携は欠かせない。また、厚生労働省や経済産業省は産業界と連携した医療物資増産体制をサポートする動きがある。いずれも、今回クローズアップされた日本社会の〝弱み〟を克服し、かつ〝強さ〟に変え、新たな成長を牽引するエンジンとして期待されている。

 だが、同時に国民一人一人が自分たち自身で、コロナと共生する「新たな日常」を形成し、パラダイム・シフトする社会の中で生きていくという意識が必要だろう。今春の自粛要請は、より甚大な被害が発生した欧州や米国に比べると緩やかながら、日本は感染者数、死亡率とも低水準に抑制できている。理由は諸説あり明確ではないが、個人が社会全体の行動規範を比較的遵守する国民性であるのもその一つ、という指摘がある。ならば今後もその傾向を維持し、〝コロナとともに生きる〟社会の在りようを草の根的に形成しなければならない。再び自粛を要する事態に戻ったら、「方針」で描いた指針は画餅に帰す。それこそ、国民生活に打撃を与える最大の要因だ。7月中旬段階で、首都圏を中心に新規感染者が増加している。ニューノーマルの生活様式、マナーや習慣を、当面はより一層遵守すべきだ。一時の気の緩みが将来に禍根を残すことにならないよう、自律と自戒が求められる。

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 1920(大正9)年に第一回が実施されて以後、今年で国勢調査が100年を迎える。ほぼ5年周期で実施され、特に西暦末尾0の年に大規模調査を行い、今年秋の調査はその21回目となる(インターネット回答は9月14日~、紙の回答は10月1日~、どちらも10月7日まで)。統計法では、正確な統計を作成するために、調査に回答する報告義務が定められているものの、制度の如何に関わらず積極的に調査に協力すべきだろう。言うまでもなく、国勢調査は国の状態、あらましを数値化する極めて重要な統計だ。1世紀の歴史を持つ国勢調査は、日本のもう一つの歴史でもある。

 特に近年は、少子化人口減が進み世帯構成なども大幅に変化していること、社会のあらゆる面でデータの利活用が進み統計がその基盤となること、この2点で国勢調査の重要性はますます高まっていると言えよう。だからこそ、その精度は正確を期さねばならない。事実を示す統計への信頼性が揺らいでは政策の方向性も不確かなものとなってしまう。

 一方で、これまで実施のたびに国が国勢調査への協力を呼び掛けているのは、なかなか国民レベルにその重要性が理解され難いことの表裏でもある。ことに、出生年月や家族構成などの個人情報提供に対し、抵抗感を覚える意識が年々強くなっているとの指摘もある。

 しかし、前記のような意義や重要性が理解されれば、調査を通じた各種行政施策の基礎資料づくりが必要、との認識も生まれるだろう。むしろ過度な個人情報秘匿の姿勢は、新型コロナウイルス感染症拡大や大規模自然災害のような非常時下において、個人に関する情報不足故に行政からの支援が滞るケースにつながっている。国民生活の向上、より良い行政サービスに提供を期すならば、まずは基盤となる国勢調査の充実が第一歩となる。

 総務省では今回の調査において、世帯と対面しない非接触型の調査方法を導入したり調査期間を延長するなど新型コロナウイルス対策にも配慮している。100年目の節目に当たる今年、統計を後世に残る国民共有の財産としたい。

(月刊『時評』2020年8月号掲載)